チャートの裏側:他人事でない「妖怪」
チャート外の興味深い現象がある。連日、映画館で満席が続いている作品だが、公開館数が少ないのでチャートには入ってこない。安倍晋三元首相を描いたドキュメンタリー「妖怪の孫」だ。銃撃事件がきっかけで、製作されたわけではない。企画が動いたのは2021年である。 「妖怪」にピンとくる人も多いだろう。昭和の妖怪と言われた岸信介元首相のことで、安倍氏は岸氏の孫にあたる。映画では、この「妖怪」は二面性をもつ。タイトルどおりの意味と、今の日本人に起こりがちな考え方、態度などを表す。ここが、本作の一つの肝である。 その考え方、態度とは、不寛容、自己責任のなすり合い、過度の不安などだ。つまり、安倍政権下で広がり...