この1本:ドライブ・マイ・カー 喪失の先、静かに深く
幼い娘を亡くし、妻も失った男が、自分の心と向き合うまでの長い旅。要約すれば目新しさはなさそうでも、濱口竜介監督の洞察と演出にかかれば、見たことのない映画になる。2時間59分の長丁場もあっという間である。 演出家の家福(西島秀俊)は脚本家の妻、音(霧島れいか)と2人で暮らす。互いをいたわり合う仲の良い夫婦だが、家福は音の浮気を目撃し、やがて音が急死する。 ここまでが映画の序盤。2年後、家福は広島の国際演劇祭に招かれる。多国籍の俳優が各言語で演じる「ワーニャ伯父さん」を演出するのだ。専属運転手のみさき(三浦透子)が、家福を送迎することになる。生前の音を知る人気俳優の高槻(岡田将生)がオーディシ...