みずかみ こうし
1999年5月11日 生まれ
2022年9月に岡田健史(おかだ けんし)から本名の水上恒司に改名。
「そうか、日本もここまで来ちゃったか~」と最初に思った。ちょっと前なら映画や漫画の中だけで想像をこえなかったテーマが令和の今、想定内の未来、地続きの未来、未来予想図じゃないか?と末恐ろしくなった作品。平野啓一郎の同名小説が原作の本作。2040年自らの意思で死を選んだ母親をAIでよみがえらせた主人公・朔也(池松壮亮くん)は普段は遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」として働く真面目な青年。だが自分に何も告げずに〝 自由死 〟を選んでいた母の本心を知るため、最新AIを搭載したバーチャル・フィギュア(VF)技術を利用して仮想空間に母をよみがえらせる。しかし段々、自分を見失っていく……。...
沖直実
2024.11.16
石井裕也監督の最新作「本心」は、平野啓一郎による同名小説を映画化したものだ。テクノロジーが急速に進化し仮想空間でのやりとりが当たり前となった少し先の日本を舞台に、時代が変わっても永遠に変わることのない〝人間の心の本質〟をめぐる物語を描いている。本作の映画化は、これが石井監督との9度目のタッグとなる池松壮亮の「これを映画化すべきだ」という提案からすべてがはじまったらしい。 コロナ禍の2020年、時代の転換期にすべてがはじまった 唯一の家族である母(田中裕子)を失った主人公・石川朔也(池松)は、生前に彼女が〝自由死〟を選択していたと聞かされる。彼はすさまじい勢いで変化していく世界に...
折田侑駿/Yushun Orita
2024.11.11
今から80年前の1944年、対米戦争で苦戦していた大日本帝国陸海軍は、爆弾を搭載した航空機が搭乗員ごと敵艦に体当たりする「特別攻撃隊」を始めた。この特攻を描いた「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」が、公開から約2カ月たっても観客を集め、興行収入40億円をうかがうという。私は実際に出撃し生還した特攻隊員や、特攻を護衛した元兵士らに取材を重ね、これまで2回にわたり、ひとシネマで特攻について書いてきた。今回は護衛機パイロットの証言で、特攻の実態をふりかえってみよう。 特攻は〝作戦の外道〟 彰が身を投じた無謀な体当たり 元特攻兵を取材した記者が見た「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」...
栗原俊雄
2024.2.07
ヒット中の映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」で、特攻隊員の佐久間彰(水上恒司)らは、自らの意志で特攻に行く。2023年からタイムスリップして来た高校生の主人公、加納百合(福原遥)は、佐久間を止めようとするものの「志願した」と言われて言葉を失う。特攻は「十死零生」、作戦とも言えない無謀な作戦だった。「国や家族を守るため、自ら犠牲になった英霊」という評価もあるものの、百合ならずとも「信じられない」と思う人は多いのではないか。 飛び立ったのは自らの意志だったのか 私は実際に特攻に出撃し、生還した多数の元兵士たちに直接会って取材してきた。その取材から言えるのは「自らの意志...
2024.1.27
第二次世界大戦末期の1944年、大日本帝国の特別攻撃隊=特攻が始まった。そこから80年の今、特攻をテーマにした「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」がヒットしている。私は実際に特攻に出撃し、生還した元兵士たちに直接会って話を聞いてきた。作品を見る前、「特攻隊員=大切な人、大切な国を守るために自らの意志で犠牲になった若者たち」という「英霊史観」に基づいた、特攻礼賛一辺倒の物語と予想していた。だが、予想は外れた。映画が描いた特攻とは何か、理解を助けるべく振り返りたい。 敗戦2カ月前にタイムスリップした女子高生 主人公・加納百合(福原遥)は現代の高校女子3年生。45年6月、つまり...
2024.1.23
愛する人のために自分を犠牲にするのか。愛する人のために自分を守るのか。己の価値観を問い直させられる映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」 父親を亡くし、母と二人きりの貧しい生活に不満を抱く女子高生・百合。ある日、進路をめぐって母親とぶつかり家出をし、近所の防空壕(ごう)跡で眠ってしまう。目を覚ますと、なんとそこは1945年6月、戦時中の日本だった。そこで百合は彰と出会い、しだいに二人はひかれ合っていく。しかし、彰は程なく命がけで戦地に飛ぶ特攻隊員だった。 正義を「植え付けた」のは当時の社会 愛する人が自らの意思でもうすぐ死んでしまう。現代ではありえない状況だが、戦時中の...
青山波月
2023.12.13
「ヒーローは自分以外の誰かを救うために自分や自分の大切な人を犠牲にする。しかし、ヒールは自分や大切な人のためにその他大勢を犠牲にする」。最近友達とこんな話をしたことを思い出した。 学校生活や家庭に憤りを感じる高校生の百合はうまくいかないのはすべてが父親のせいだと母親に言い放ち家を飛び出す。百合の父親は溺れた子供を助けるために川に飛び込み、子供を助け自らの命を落としてしまっていた。大切な百合と母親を残して。子供にとって百合の父親はヒーローだが、百合はヒールでかまわないから生きてほしかったのだ。 ヒールでもいいから生きていて欲しい 雨宿りの防空壕(ごう)の跡、百合が目を覚ますと...
古庄菜々夏
2023.12.07
死刑判決を受けたシリアルキラー(連続殺人犯)の榛村(はいむら)(阿部サダヲ)による残忍な手口と心理的サスペンスを描いた白石和彌監督の新作。被害者や榛村の周囲の人物を巧妙に配置し、真相に迫る狂言回しとなる大学生筧井(岡田健史)の心情の揺れを柱に、ざらざらとしたエンタメ作品に仕上げた。 榛村は誰にも好かれるパン屋の店主。気立てのいい高校生に近づき、信頼関係を築いた後に冷酷な方法で犯行に及んだ。常連客で鬱屈としていた筧井は、榛村から「最後の事件はやっていない。真犯人を捜してほしい」と手紙で託され犯人捜しにのめり込んでいく。 榛村と筧井の母との関係性、榛村に精神的に支配されることで生気をみなぎらせ...
2022.5.06
太平洋戦争では、ラジオ放送による「電波戦」という戦いが日本軍の戦いを支えていた。ナチスのプロパガンダ戦に倣い「声の力」で戦意高揚・国威発揚を図り、偽情報で敵を混乱させた。そしてそれを行ったのは日本放送協会とそのアナウンサーたちだった。戦時中の彼らの活動を、事実を基に映像化し、アナウンサーたちの苦悩と葛藤、放送と戦争の知られざる関わりを描く。 太平洋戦争の始まりとなるラジオの開戦ニュースと終戦を伝える玉音放送。その両方に関わったのが 天才と呼ばれた和田信賢アナ(森田剛)と新進気鋭の館野守男アナ(高良健吾)だった。1941年12月8日、大本営からの開戦の第一報を和田が受け、それを館野が力強く読み...
「大事な話があるの」そう言い残して急逝した母が、実は〝自由死〟を選んでいた。唯一の家族を失くした朔也(池松壮亮)は、幼なじみの岸谷(水上恒司)の紹介で「リアル・アバター」の仕事を始める。カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル(現実)のアバター(分身)として依頼主の代わりに行動する業務を通して、人々が胸の内に秘めた願いや時には理不尽な悪意にさらされ、人の心の奥深さとわからなさを日々体感してゆく。そんなとき、仮想空間上に任意の〝人間〟を作る「VF(バーチャル・フィギュア)」という技術を知る。「母は何を伝えたかったのか?どうして死を望んでいたのか?」整理のつかない気持ちを解消するため、なけなしの...
里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士たちの運命を描く「八犬伝」の〝虚構〟の世界と、作家・滝沢馬琴と挿絵を頼まれた浮世絵師・葛飾北斎の奇妙な友情を通じて創作の真髄に迫る〝実話〟の世界。失明しながらも28年の歳月をかけて「八犬伝」を書き上げた馬琴の苦悩と葛藤、執念が生んだ世界を壮大なスケールで描き出す。 主人公の滝沢馬琴を役所広司、葛飾北斎を内野聖陽、八犬士の運命を握る伏姫(ふせひめ)を土屋太鳳、馬琴の息子・宗伯(そうはく)を磯村勇斗、宗伯の妻・お路(おみち)に黒木華、馬琴の妻・お百(おひゃく)を寺島しのぶが演じる。監督は「ピンポン」(2002年)や「鋼の錬金術師」シリーズ...
愛したホスト・隼人を刺し殺そうとした過去を持つ女、沙苗。事件から6年が経ち、出所した沙苗は、お見合いで出会い、沙苗の過去を受け入れてくれた健太と結婚する。平穏な結婚生活が始まったと思っていた矢先、2人の前に謎めいた隣人の女・足立が現れる。気さくな足立に心を許しかけていた時、明かされる秘密。そして、全てを捧げた隼人の影に翻弄される沙苗。健太の温もりを受け取りながらも、沙苗がたどり着いた〝愛し方〟とは。 監督は、東京藝術大学大学院の修了制作「小さな声で囁いて」(2018年)がマルセイユ国際映画祭、全州国際映画祭などに出品された山本英。2019年に起きた新宿ホスト殺人未遂事件にインスパイアされ、脚...
原作は、累計発行部数650万部を突破するヤンキー漫画「OUT」。監督を務めた品川ヒロシの中学からの友人・井口達也の青年時代を詰め込んだ実録物語。 〝狛江の狂犬〟と恐れられた超不良・井口達也が少年院から出所した。地元から遠く離れた叔父叔母の元、焼肉店の三塁で働きながらの生活を始めるが、保護観察中の達也は、次また喧嘩をすれば一発アウトだ。そんな彼の前に現れたのは、暴走族「斬人(キリヒト)」副総長の安倍要。この出会いが達也の壮絶な更生生活の始まりとなる。 Ⓒ2023『OUT』製作委員会 Ⓒ井口達也・みずたまこと(秋田書店)2012
TikTokで〝泣ける〟と、10代を中心に人気を博し、シリーズ累計発行部数50万部の汐見夏衛による「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」(スターツ出版文庫)を福原遥、水上恒司のダブル主演で映画化。監督は、CMディレクターとし長く活躍し、長編映画は2作目となる成田洋一。 親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの女子高生・百合(福原遥)は、母親と進路をめぐってぶつかり、家出して近所の防空壕跡に逃げ込むが、朝、目を覚ますとそこは1945年、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられ、彼の誠実さや優しさに惹かれていく百合だったが、彰は特攻隊員で、程なく戦地に飛ぶ運命だった。 ...
志望校の受験に失敗し挫折感を抱える大学生の筧井(岡田健史)は、10代の少年たちを殺害し死刑判決を受けている榛村(阿部サダヲ)からの手紙を受け取る。榛村は表向きは人あたりの良いパン屋で、筧井は幼い頃に常連だったのだ。榛村は有罪とされたうちの1人は自分の犯行ではない、冤罪を晴らしてくれと依頼する。半信半疑の筧井が調べ始めると、自身の母親が施設で育ち、榛村と旧知の仲だったこと、榛村が無罪を主張する1人が、他の被害者と明らかに異なることなどが、次々と分かってくる。櫛木理宇の小説を映画化。 ©2022 映画「死刑にいたる病」製作委員会