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2023.9.07

人を見た目で判断しないことの大切さが詰まった作品! 「エリン・ブロコビッチ」

Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。

古庄菜々夏

古庄菜々夏

シングルマザーのエリン・ブロコビッチは職探しの途中で信号無視の車に衝突される交通事故に遭う。こちらに過失のない事故だから絶対に勝てると弁護士のエドワードはエリンの弁護を請け負うが、金目当ての当たり屋と相手側に匂わされた結果、敗訴してしまう。事故で負傷したにもかかわらず賠償金を得ることもできず、このままでは生活ができないと言い仕事をあっせんするように要求、半ば強引に彼の事務所で働くようになる。
 

史上最高額の和解金を勝ち取った彼女

エリン・ブロコビッチとはアメリカの環境運動家であり実在する人物だ。映画「エリン・ブロコビッチ」では環境汚染に対する史上最高額の和解金を勝ち取った彼女の半生が描かれている。あらすじを読んだ時は正直、裁判や法律などのいわゆる社会系の作品なのかと思い見るのが少しおっくうだったが、想像以上に面白い、そしてスッキリする映画だった。なぜ内容や題材の割に見やすい映画になっているのだろうか
 

最終的に二人は最高のコンビに

まず最高だったのはエリンの性格だ。言葉は少々きついが言いたいことを思いっきりいうタイプで、どんな相手だろうがひるまず物申す。そんな姿は見ていて気持ちが良いしかっこいい女性だなとも思った。特にお気に入りのシーンはエリンが働くことになる弁護士事務所のベテランの弁護士と「F○ck you」と思いっきり言い合うシーンだ。弁護士も言うのかと驚いた(笑い)。正直、見ていて気持ちが良いし何度見ても笑えてしまう。弁護士の彼は映画冒頭でエリンが事務所で働くことを渋々許可するのだが、エリンの奇抜な服装や言動に最初は戸惑う。しかし彼女の芯の強さや言動に少しずつ影響されていき、最終的に二人は最高のコンビにさえ見えてくる。年の差やキャリアを気にせずに正直に言い合い、ときに尊重し合う姿はこの映画の醍醐味(だいごみ)だ。
 

自身が持っている魅力で訴訟に

先述したようにエリンの性格そして生い立ちが、この作品を良い意味で法律の堅苦しさから脱線させている。彼女は結婚と離婚を2回繰り返しており子育てもしている。そんな彼女が法律事務所で働くことになるのだが、もちろん今まで法律教育は受けたことがない。法律の知識や規範を知らない代わりに彼女自身が持っている魅力で訴訟に立ち向かうのだ。自ら住民たちのもとへ足を運び、彼らの痛みと向き合う姿を見て住民たちも次第に心を開いていく。周りの法律家の誰よりも被害者に寄り添い、彼女をみくびっていた人たちを彼女の人情と少々荒い言葉遣いで黙らせてしまうシーンは痛快だ。そういう面で日常にむしゃくしゃしている人やスカッとしたい人にもおすすめの映画なのではないだろうか(笑い)。
映画の構成も秀逸だと感じた。大企業の不正をエリンが暴いていき和解金を勝ち取るまでの過程に、問題を起こしている大企業側が描かれるのはほんの一瞬だ。その代わり、被害を受けている住民たちとエリンの関係性や住民たちの心情が丁寧に描かれている。常に作品内のフォーカスを原告側に当てることによってエリンや住民に感情移入しやすくなっている。
 

一瞬だがぜひ注目してほしい

映画後半に登場する大企業の従業員男性の表情がたまらない。その男性自身がいとこをその企業のせいで昨日亡くしたとエリンにカミングアウトする表情が天才的だと感じた。たとえそれまでの展開を一切知らなかったとしても男性の感情に引き込まれてしまうような表現力だ。その男性は以前、上司に今回の訴訟において重要になる書類を廃棄しろと命令を受けたことがあると言う。男性自身の判断で書類は廃棄せずに所持しており、そのおかげで訴訟への準備が大幅に進むことになるのだが、不正がもう少し早く明るみに出ていればとどうしても思ってしまう。一瞬だがぜひ注目してほしい。
 

自分らしくいることへの勇気をもらった

実は主人公のモデルになったエリン・ブロコビッチ本人も「カメオ出演」し、本人とは違う役で映画に登場している。エリンを演じるジュリア・ロバーツとエリン本人が共演するなんて、なんと粋な演出なんだとワクワクした。そして、そのシーンがエリンの美しさや強さをジュリア・ロバーツが演じきっていることが分かる圧倒されるシーンだった。良くも悪くも人を見た目で判断しないことの大切さが詰まった作品だ。弁護士たちの中にはエリンの見た目を見て彼女は仕事に適正ではないと判断する人がいる。実際は人情味あふれるやり手なのに。エリンは若い頃の可愛さや美しさだけでは生きていけないと嘆いたり、逆に現在の自分のファッションや美へのこだわりを吐露したりする。私はこの作品から自分らしくいることへの勇気をもらった。自分に自信をうまく持てない人や繊細になり過ぎてしまう部分がある人にぜひ見てほしい。少し気持ちが楽になるのではないだろうか。

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ライター
古庄菜々夏

古庄菜々夏

ふるしょう・ななか
2003年7月25日生まれ。福岡県出身。高校の時に学生だけで撮影した「今日も明日も負け犬。」(西山夏実監督)に主演し「高校生のためのeiga worldcup2021」 最優秀作品賞、最優秀女子演技賞を授賞。All American High school Film Festival 2022(全米国際映画祭2022)に参加。現在は東京の大学に通いながら俳優を目指す。

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