「レイダース 失われた聖櫃《アーク》」より TM & © 1981,2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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2023.9.16

自分というフィルターを通したからこそ生み出される!大学生ライターが書いたコラムをキネマ旬報元編集長がアドバイス

ひとシネマには多くのZ世代のライターが映画コラムを寄稿しています。その生き生きした文章が多くの方々に好評を得ています。そんな皆さんの腕をもっともっと上げてもらうため、元キネマ旬報編集長の関口裕子さんが時に優しく、時に厳しくアドバイスをするコーナーです。

関口裕子

関口裕子

堀陽菜

堀陽菜

大学生のひとシネマライター堀陽菜さんが書いた映画コラムを読んで、元キネマ旬報編集長・関口裕子さんがこうアドバイスをしました(コラムはアドバイスの後にあります)。

クリエイティブな緊張感

「レイダース 失われた聖櫃《アーク》」が公開されたのは1981年。40年以上も前だ。評価も固まっている作品なので、まったく情報を耳にせずに見ることは難しいが、堀陽菜さんはいまの感覚で作品をとらえ、そのポイントを解説してくれた。
 
興味を持ったポイントが2つある。1つは、この作品を「気持ちが渋滞してしまうほどいろんな要素を持ち合わせている」作品だととらえ、ロマン、アクション、ホラー、恋愛などの要素を見つけ出した。
 
映画のジャンルとしてはアドベンチャーと分類されることが多いこの作品だが、堀さんはどこで「渋滞してしまうほどいろんな要素を持つ」と感じたのか気になった。比較として比べた作品があるならば、それを知ることで、きっと現代の観客に好まれやすい映画を作るにあたって見出したマーケティングポイントが浮かび上がってくるだろう。
 
もう1つは、CG技術が開発途上にあった1980年代の特撮映像について触れた部分。「実際に炎や車を使って撮影していたのかと思うと、完成度が高すぎるあまり、撮影現場の雰囲気や役者に与えただろうプレッシャーなど気になる点は尽きない」という。スタジオはずっといまよりテーマパーク感にあふれていただろうし、そこで演技をする俳優たちはクリエイティブな緊張感を感じていただろう。
 
1994年の映画だが「フォレスト・ガンプ/一期一会」で実在した亡き偉人たちと共演したトム・ハンクスは、来日した際、ブルーバックの前で演技をしていく未来や、俳優である自分すらいらなくなる可能性について、危惧感を抱いていた。その心配は杞憂に過ぎず、約30年経ったいまもトム・ハンクスは演技を続けているが、この先は分からない。
 
技術の進歩によって撮影状況が大きく変わるジャンルの作品を演じる俳優たちの心情に思いをはせたコラムは、アイドルという世界で活躍する堀さんが自分というフィルターを通したからこそ生み出されたものでもあるだろう。そのフィルターに引っ掛かったポイントを、総花的に取り上げるのもよいが、あるポイントをさらに一歩踏み込んで分析してみると、より面白い読み物となるようにも思う。

堀さんのコラム

「ディズニーのやつですね!」
 
インディ・ジョーンズ作品を見ようと思った時、真っ先に口から出た言葉だ。ディズニーのアトラクションになるくらいだから、少年が夢見るような、言ってみれば子供だましの冒険ストーリーを思い描いていたが、期待をはるかに上回る濃密度作品だ。
 
「これ、子供が見たら泣きますよ」というか、「20歳の私でも半泣き状態でしたよ」と、完全に油断していた。そんなインディ・ジョーンズシリーズの「レイダース 失われた聖櫃《アーク》」について語っていきたいと思う。
 

見どころが多く興奮が止まらない

さあ、何から語ろうか。気持ちが渋滞してしまうほどいろんな要素を持ち合わせている作品である。ロマン、アクション、ホラー、ロマンス‥‥‥、ここまでの要素が詰め込まれた作品を見るのは、まるで宝箱を見つけたような感覚で、シーンが進むにつれこれほど興奮が止まらなくなる作品は初めてだ。有名な丸の岩玉が落ちてくるシーンは、まるでアニメのようなオチではないだろうか。
 
このシーンだけではない、ネパールのマリオン(インディの恩師の娘)の酒場やカイロの街角、アークを奪い返した後のトラック逃走劇などなど‥‥‥。銃やナイフを使った抗争が絶えないアクションは見ていて痛快だ。1980年代に実際に炎や車を使って撮影していたのかと思うと、完成度が高すぎるあまり、撮影現場の雰囲気や役者に与えただろうプレッシャーなど気になる点は尽きない。
 
「リアルな撮影」で言うと、アークがある「魂の井戸」のシーンが印象的だった。初めに井戸のふたを開けた時、サラー(インディがカイロで協力を求めた人物)が感じた違和感、「床が動いているみたいだ」と言い放ち、明るく照らすとそこには床いっぱいに敷き詰められた大量のヘビ。あのシーンは、なんと本物のヘビを用意して撮影されたらしい。背筋が凍るような、それでいて冒険家の野心が一気にかき立てられるあの部屋での探検は、レイダースの見どころであると私は思う。
 
だが実際、自分自身が役者だったらあのシーンはスタンバイの時点で腰を抜かしそうだ。リアルな撮影が生み出すハラハラ感が時間を忘れさせるシーンであった。あんなにも野心家なジョーンズは大のヘビ嫌いというキャラクター像もギャップあってもえる。
 
何度もピンチになるジョーンズたちだが、必ず突破してくれる安心感も作品の中で好きなポイントである。井戸に閉じ込められたジョーンズとマリオンが脱出口を見つけるために体を張って進み続ける。
 

シリーズを象徴する音楽「レイダースマーチ」が高揚感を与える

 作品にはホラー要素もかなり詰め込まれている。とにかく人が死んでいく。そしてそれも結構リアルに。激しい戦いや、古代遺跡の中のトラップなど、まさに冒険家が危機一髪で乗り越える緊迫感に息をのむ。ろう人形が使われていたり、作品の全体的な色味だったりがリアルな戦いの汗を引き出した表現を作り出していた。ここでも、ジョーンズは絶対勝ってくれるんだ!という思いで見入ってしまう。
 
出てくる登場人物のキャラクター像にも注目しておきたい。何気に目を引くのがカイロの街角で懐いてくるサルである。一見、可愛い見た目からジョーンズたちのお供に付き添うのかと思いきや、実は悪者の主人からスパイするように調教されていたという裏があった。
 
ジョーンズとマリオンの逃走がなかなかうまくいかない時に「またお前かい!」とツッコミたくなるぐらい邪魔をしてくるあの憎たらしさも、作品の中でスパイスになっている。ご主人様の仕込んだ毒入りの果物をうっかり食べてしまう最後のオチも気の毒だが良い。
 
そしてなんといっても外せないのがあの音楽「レイダースマーチ」である。作品は見たことないけどレイダースマーチは知っているという人も多いだろう。作中にこれでもかというぐらい流れていたあの音楽は、ジョーンズたちの冒険にさらに興奮を与えてくれる(何を隠そう、この原稿を執筆している今もこの曲を聴きながらパソコンと向かい合っている笑)。
 
今年の6月に待望の5作目が公開になる。今回、私が見た「レイダース 失われた聖櫃《アーク》」はインディ・ジョーンズシリーズの第1作なので、6月までにあと3回もハラハラドキドキが味わえるということだ! 2作目の「魔宮の伝説」(84年)、3作目の「最後の聖戦」(89年)、4作目の「クリスタル・スカルの王国」(2008年)、そしてシリーズ5作目となる「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」(23年)の全てでハリソン・フォードがインディ・ジョーンズを演じている。すでに80歳になったハリソン・フォードが演じる新たなインディ・ジョーンズが今から楽しみである。

 
 

 
「インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》」
4K Ultra HD+ブルーレイ:6589円(税込み) 2023年6月7日発売
Blu-ray:2075円(税込み)
DVD:1572円(税込み)
NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2023年5月現在の情報です。
TM & © 1981,2023 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

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ライター
関口裕子

関口裕子

せきぐちゆうこ 東京学芸大学卒業。1987年株式会社寺島デザイン研究所入社。90年株式会社キネマ旬報社に入社。2000年に取締役編集長に就任。2007年米エンタテインメント業界紙VARIETYの日本版「バラエティ・ジャパン」編集長に。09年10月株式会社アヴァンティ・プラス設立。19年フリーに。

ライター
堀陽菜

堀陽菜

2003年3月5日、兵庫県生まれ。桜美林大学グローバルコミュミュニケーション学群中国語特別専修年。高校卒業までを関西で過ごし、大学入学と共に上京。22年3月よりガールズユニット「MerciMerci 」2期生として活動開始。
好きな映画は「すばらしき世界」「スピードレーサー」「ひとよ」。幼少期から兄の影響で色々な映画と出会い、映画鑑賞が趣味となる。特技は14年間続けた空手。

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