この1本:「生きる LIVING」 普遍の命題にじむ希望
「人生の意味」は芸術表現の普遍的な主題だろうが、ここまで直截(ちょくせつ)なタイトルも珍しい。しかし優れた物語は青臭い命題もしみじみと考えさせてくれる。映画館の暗闇で浸るのにふさわしい良作だ。 1953年のロンドン。役所の市民課に新人ピーター(アレックス・シャープ)が着任した。課長のウィリアムズ(ビル・ナイ)はじめ同僚たちは、問題先送りが仕事のよう。広場の排水改善を陳情に来た女性たちの案内を命じられたピーターは、役所の中をたらい回しにされて市民課に戻り、書類は保留の棚に放置されてしまう。ある時ウィリアムズは余命半年と診断され、自分の人生の空虚さに気付く。かつての部下マーガレット(エイミー・ル...