この1本: 「熊は、いない」 監督自身の苦難と重ねて
イランのジャファル・パナヒは、世界で一番動向が注目される映画監督の一人だ。新作が待たれるというだけでなく、出国も創作も禁じられた状況で心身の安全と健康が気遣われるという意味でも。「オフサイド・ガールズ」などが反体制的だと2010年に逮捕されて以来、当局の目を逃れて映画を撮り続け、国際映画祭での受賞を重ねている。本作もベネチアで審査員特別賞を受賞した。 「これは映画ではない」(11年)以降の作品で、パナヒ監督は自身の置かれた状況を逆手にとって物語を作り、自身で主演する。「熊は、いない」でパナヒ監督が演じるパナヒは映画監督で、偽造パスポートで出国を図る俳優夫妻のドキュメンタリー風の新作の撮影中だ...