この1本:「658km、陽子の旅」 癒やされていく孤独感
物語は明快、タイトルそのまま。急死した父親の葬儀に出席するため、東京から青森県弘前市に向かう陽子の旅を描く。移動距離が 658 ㌔。途中で人と出会い、陽子が自分を見つめ直す展開も定石通り。奇をてらったわけではないロードムービーだが、現代を映すような陽子の造形と、陽子を演じた菊地凜子の好演が相まって、胸にしみる佳品となった。才能発掘の公募企画「 TSUTAYA CREATORS′ PROGRAM 」で入選した室井孝介の脚本を原案に、熊切和嘉が監督。上海国際映画祭で作品、女優、脚本の各最優秀賞を受賞した。 名前と裏腹に、陽子は無愛想で社交性皆無。在宅、オンラインで働き、買い物も通販、半ば引きこも...