シネマの週末

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2024.12.27

執筆陣が選ぶ今年の映画 この3本

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

今年最後の「シネマの週末」は、執筆陣が選んだ今年の「この3本」をお届けします。白丸数字が邦画、黒丸数字が洋画。あなたの3本と比べながらどうぞ。

大高宏雄

①碁盤斬り
②ぼくが生きてる、ふたつの世界
③Cloud クラウド
❶シビル・ウォー アメリカ最後の日
❷ビートルジュース ビートルジュース
❸デッドプール&ウルヴァリン

邦画の娯楽大作に面白い作品が少なかった。洋画の娯楽大作に面白い作品が多かった。娯楽作品の動向をとことん追っていく。映画と観客の出会いの場を見つめる。

高橋諭治(諭)

①彼方のうた
②Cloud クラウド
③ナミビアの砂漠
❶HOW TO BLOW UP
❷マンティコア 怪物
❸人間の境界

娯楽映画とアート映画が融合したようなユニークな快作が異彩を放った。際どいテーマの社会性もある❶❷には心底驚いた。

勝田友巳(勝)

①化け猫あんずちゃん
②ラストマイル
③侍タイムスリッパー
❶ゴッドランド/GODLAND
❷オッペンハイマー
❸ボーはおそれている

邦洋とも、毛色の違う3作を。2024年、作品は洋画の方が多彩で充実していたと感じたが、興行は邦画圧勝。外国映画がんばれ。

細谷美香(細)

①夜明けのすべて
②ナミビアの砂漠
③Cloud クラウド
❶哀れなるものたち
❷パスト ライブス/再会
❸ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

女性の生きづらさや欲望を斬新な描写ですくいあげた作品や、世界の分断を想像力で乗り越えようとする作品が心に残った。

倉田陶子

①あんのこと
②ラストマイル
③ナミビアの砂漠
❶関心領域
❷ぼくの家族と祖国の戦争
❸人間の境界

河合優実の演技に魅了された①③。②はドラマの世界とつながる仕掛けを堪能した。❶❷❸は戦争や難民問題について考えさせられた。

山口久美子

①デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章
②ラストマイル
③キングダム 大将軍の帰還
❶関心領域
❷シビル・ウォー アメリカ最後の日
❸落下の解剖学

自分がどれだけ、見えるはずのものを見ないようにすることで「日常」や「便利さ」を享受しているのかを思い知った①②❶。

鈴木隆(鈴)

①室井慎次 敗れざる者/生き続ける者
②悪は存在しない
③一月の声に歓びを刻め
❶人間の境界
❷ありふれた教室
❸燈火(ネオン)は消えず

室井の生き様に胸打たれ、映画の深さに見とれ、監督の覚悟に圧倒された3本。洋画は世界の今と困難を凝縮した逸品ぞろい。

渡辺浩

①あんのこと
②Cloud クラウド
③ナミビアの砂漠
❶DOGMAN ドッグマン
❷関心領域
❸人間の境界

撮りにくい個人的領域に踏み込む若者たちを称揚したい。邦画は日本映画が避けていた個人の領域に踏み込み、洋画は一つの問題を追究する思考に感心した。

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