毎日映画コンクールは、1年間の優れた作品と活躍した映画人を広く顕彰する映画賞です。終戦間もなく始まり、映画界を応援し続けています。
第78回毎日映画コンクール
第78回毎日映画コンクール受賞者のパネル展示が8日、東京都中央区の「COREDO室町1」地下1階のタロー書房横で始まった。21日まで。鈴木亮平さんや広瀬すずさんら受賞者の表彰式での様子を投影した電照パネルが並んでいる。8日には毎日映画コンクール初のパネル展示開催を記念したテープカットセレモニーが開かれた。スペシャルゲストとして「さよなら ほやマン」で主演を務め「スポニチグランプリ新人賞」を受賞したアフロさんが登壇した。 カミカミの返しで非常に恥ずかしかった 表彰式ではド派手な〝ほやスーツ〟に身を包んで会場を沸かせたアフロさんだが、この日は全身黒のスマートな衣装で登場。司会から表彰式の思い出を尋ねられたアフロさんは柔和な笑みを浮かべながらこんなエピソードを明かしてくれた。 「広瀬すずさんが隣に来たときに、この〝ほやスーツ〟を見て『かわいいですね』って言ってくださったんです。俺も15年間音楽をやり続けて、ライブという修羅場をくぐってきた男なんで、『動じないぞ!』という気持ちでいたんですけど……。すごく近い距離で広瀬すずさんに『かわいいですね』って言われて、俺、『さ、さ、さ、触ってもいいですよ!!』ってもうカミカミの返しで非常に恥ずかしかったのを覚えています(笑い)。その(広瀬さんが)ほやスーツを触っているところも記者さんが写真を撮ってくださって記事になっているのが、すごく思い出深く、すごく楽しい思い出です」 〝ほやスーツ〟に賞をくださった 肝心のパネルについては、「やっぱり鈴木(亮平)さんと宮沢(氷魚)さんのスタイルの良さをぜひ見てほしいんですけど……」と会場を笑わせつつ、「この奇をてらった『ほやマン』で行って良かったと思っております。そしてなんだか、ここにほやマンがいると、この〝ほやスーツ〟に賞をくださった毎日映画コンクールの懐の深さみたいなものもこのパネルで表現できている気がして、すごく誇らしい気持ちでいっぱいでございます」と胸を張った。 早くオファーをいただきたい 本業はラップグループ「MOROHA」として活動するミュージシャンだが、今後も俳優活動は継続する。ただ他のオファーはまだ来ていないようで「一生懸命かっこつけたいから『(オファーが)来てるけど断ってますよ』って顔をしているんですけど、それもそろそろ限界なんで、ちょっと早くオファーをいただきたいと思っております!」とメディアを通して映画関係者に呼びかけていた。 ◇◇◇ 今回のパネル展示ではSNSキャンペーンも同時開催している。「#第78回毎日映画コンクール」とハッシュタグを付けてX、Facebook、Instagramに投稿すると、抽選でTOHOシネマズペア鑑賞券(10組、20名様)または、毎日映画コンクール会場限定パンフレット(10名様)が当たる。期間はパネル展示と同じく4月8日(月)から4月21日(日)まで。
ひとシネマ編集部
2024.4.08
2月14日、東京・目黒の目黒パーシモンホールにて行われた第78回毎日映画コンクールの表彰式。受賞者がそれぞれの喜びや感動を自らの声で伝えました。その模様の写真を日本橋室町のCOREDO室町1B1タロー書房横にて展示します。俳優部門受賞の6人が電照パネル・ルーファスにて掲示されます。パネルの中のQRコードを読みこめばひとシネマ内の第78回毎日映画コンクールの記事が読むことができます。期間は4月8日~21日。 なお、期間中イベントの模様を「#第78回毎日映画コンクール」を付けてSNSにアップすると抽選でTOHOシネマズ日本橋の映画チケットを10組20名様、毎日映画コンクール会場限定パンフレット10名様にプレゼントします。 第78回毎日映画コンクールパネル展 4月8日(月)~21日(日)平日11時~23時、土日祝10時~23時 COREDO室町1B1タロー書房横(東京都中央区日本橋室町2の2の1) 男優主演賞「エゴイスト」鈴木亮平、女優主演賞「市子」杉咲花、男優助演賞「エゴイスト」宮沢氷魚、女優助演賞「キリエのうた」広瀬すず、スポニチグランプリ新人賞「さよなら ほやマン」アフロ、「BAD LANDS バッド・ランズ」サリngROCK 主催:毎日新聞社 協力:COREDO室町
2024.3.26
「去年と比べて、今年の毎日映コンを見てどうでしたか」と、コンクール終了後に軽く質問された。即座に「そうですね……」と続けて自分の言葉を紡いだ。軽く受け答えたつもりだったのだがとっさに出てきた言葉が、「今年は自分のアイドルグループのことばかり考えるコンクールでした」と知らぬ間に答えていた。思いがけない自分の返答に驚いた。 というのも、昨年も同様にひとシネマの学生ライターとして毎日映画コンクールに参加し、また同様に記事を書いた。その内容は実に自分中心で自分自身の過去を目いっぱいさらけ出す内容だったように思う。1年の月日を経て私が今年の毎日映コンの授賞式で感じたことは〝チーム〟という存在だ。中でも印象的だったのがTSUTAYA DISCAS映画ファン賞を受賞した「劇場版 美しい彼~eternal~」を代表して授賞式に参加した八木勇征さんの言葉だ。「個人としてではなくチームの代表としてこうしてこのトロフィーを頂けているなと思っている」と語ったその言葉は私にとってタイムリーに刺さる言葉だった。 映画作りもアイドル活動も似ていると思う。個人戦ではなく本質的にはチーム戦だ。それが評価されて初めて達成感を感じる。毎日映コンならではの特徴的な賞にも、それが表れていると思う。「スタッフ部門」で登壇した全員から感じたことは、映画作りにおいて脚本、撮影、美術、音楽、録音は裏方として〝支える〟側ではなく、すべての人が表舞台に立っていると感じた。役者含め全スタッフがその作品の「顔」だということだ。 撮影賞を受賞した鎌苅洋一さんの言葉が興味深かった。昨年、大きな事故にあった鎌苅さん。自分自身が実際に事故を経験したことにより「死」のリアルさを知ったという。今までは人が死んでいく物語をカメラマンとして技術的に撮影していたが、実際に自身が体験した事故でこれまで自分が人の不幸を作り上げてきたかもしれないという罪悪感を覚えたと語っている。「撮影者」という〝スタッフ〟と呼ばれる人の繊細な世界を一気にのぞき込んだ気持ちになった。鎌苅さんはその後、しばらくの休職期間を設けていると話していたが、映画はつくづく各人の人生と連動して作り上げられるものだと感じた。スタッフの経験、感性、その土台があってこその一つの作品であり、すべての人が自分の人生と向き合っている姿がかっこいい。鎌苅さんは、今回の毎日映コンで撮影賞を受賞したことにより再び新しい作品を作りたいと語っていた。私は次の作品が楽しみで仕方がない。 最初にも述べたように、映画作りとアイドル活動はとても似ている。何人もの集団が一つのパッケージとして存在している。その中でもちろん一人一人に役割があるわけで、自分に何が出来て何を求められているのかを常に考えなければならない。自分の立ち位置を把握し、極め続ける作業の繰り返しだ。その道を極め続ける毎日映コンの受賞者たちの言葉はどれもこれも私には重く突き刺さる言葉だった。「自分のグループ」と照らし合わせた時にまだまだできることがあるんじゃないかと尻をたたかれる気持ちになった。 グループが好きだから、メンバーが大好きだからこそ思えた感情にあふれていた。今年の毎日映画コンクールは、そんな自分のグループ活動への高揚感を更に高めてくれる時間であった。この気持ちがメンバーに伝わることを願って行動し続けたい。
堀陽菜
2024.2.20
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。2023年を代表する受賞者に加え、スタッフや共演者も祝福に駆けつけ、華やかなステージとなった。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 行政に変化を ドキュメンタリー映画賞の「『生きる』大川小学校 津波裁判を闘った人たち」は、東日本大震災で犠牲となった小学生らの遺族が起こした裁判を追った。寺田和弘監督は原告の2人と登壇し、「受賞は原告遺族の活動に共感してくれたから。真相究明は1ミリも進まず、行政に変化をもたらすことを期待している」と訴えた。 アニメーション映画賞の「アリスとテレスのまぼろし工場」の岡田麿里監督は「アニメへのあこがれを詰め込んだ作品。製作中の葛藤や情熱や迷いが画面に表れていると思います」とあいさつした。 高畑勲が悔しがっていた 大藤信郎賞の「君たちはどう生きるか」の鈴木敏夫プロデューサーは、自身も特別賞を受賞。「伝統ある大藤賞で、高畑勲が取れずに悔しがっていた。特別賞はジブリを作ってくれた徳間書店の徳間康快社長も受賞していてうれしい」と喜んだ。 TSUTAYA DISCAS映画ファン賞は「劇場版 美しい彼 eternal」。主演の一人、八木勇征がトロフィーを受け取り「チームの代表として受け取った。監督、原作者、スタッフ、共演の萩原利久の気持ちを背負って登壇しています。幸せな気持ちです」。
2024.2.14
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。毎日映コンならではのスタッフ部門、受賞者は口々に喜びを語った。 「月」で撮影賞の鎌苅洋一は、2023年6月の交通事故に遭いリハビリ中と明かした。「受賞の連絡に、仕事を続け、作品を届ける思いを新たにした」と話した。美術賞の上條安里は「ゴジラ-1.0」での仕事を「子供の頃から憧れだったゴジラに関われてうれしい。数カ月かけてがれきを集めて燃やした」と振り返った。音楽賞のジム・オルークは熊切和嘉監督の「658km、陽子の旅」で受賞。「熊切監督とは14年間仕事をしてきた。一緒に作れてうれしい」とあいさつ。 録音賞は「せかいのおきく」の志満順一。「日本の映画人にとって一番うれしい賞。学生時代の自主映画のように、好きで作った作品が花開くのを味わえたことが大きな喜び」と語った。脚本賞は同じ「せかいのおきく」の阪本順治。「低い視座から世の中を見ようと心がけているが、今回は汚いところから見てやろうと覚悟した。クソ真面目に、やけクソで、なにクソと思って作った」とシャレでまとめた。 「月」で監督賞の石井裕也は、作品を見ることなく亡くなった河村光庸プロデューサーの名前を挙げた。「あの世で喜んでいるのでは。世間の批判を気にせず、同調圧力やえたいの知れない空気と闘った。エッセンスを引き継いで頑張りたい」と力強く。 【第78回毎日映コン表彰式 関連記事】 八木勇征「萩原利久の気持ちも背負っています。幸せです」 ほやマンスーツ・アフロvsヒョウ柄ドレス・サリngROCK 「責任感が情熱に」鈴木亮平 「また一緒に」宮沢氷魚 杉咲花「かけがえのない出会い」 広瀬すず「アイナを支えた」 「こんなこともあるんだ」阪本順治 「祈り込めた」塚本晋也
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。スポニチグランプリ新人賞の2人は、目を奪う衣装で引きつけた。2023年を代表する受賞者に加え、スタッフや共演者も祝福に駆けつけ、華やかなステージとなった。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 スポニチグランプリ新人賞は「さよなら ほやマン」のアフロ。劇中で着た「ほやマン」の真っ赤な衣装で登場し、会場を沸かせた。「魂のスーツです。共演の黒崎煌代くんが受賞すると思ったけれど、10年後に人間として輝いて、選考委員がアフロでも悪くなかったと言ってくれる未来を目指したい」と明るく宣言。 同じ新人賞のサリngROCKは「BAD LANDS バッド・ランズ」で見せた不穏なたたずまいから一転、ヒョウ柄のドレスに身を包んで登場。「賞は私ではなく、原田眞人監督、共演の安藤サクラさん、山田涼介さん、スタッフ、映画への賞やと思ってます」と関西弁を交えてあいさつ。原田監督からの「直近の目標は浪花千栄子。世界を目指しましょう」と手紙が読み上げられた。 【第78回毎日映コン表彰式 関連記事】 八木勇征「萩原利久の気持ちも背負っています。幸せです」 「憧れのゴジラ 関われてうれしい」 「責任感が情熱に」鈴木亮平 「また一緒に」宮沢氷魚 杉咲花「かけがえのない出会い」 広瀬すず「アイナを支えた」 「こんなこともあるんだ」阪本順治 「祈り込めた」塚本晋也
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。男優賞は主演、助演とも「エゴイスト」。松永大司監督も駆けつけた。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 「エゴイスト」では、鈴木亮平が男優主演賞、宮沢氷魚が男優助演賞とそろって受賞。松永大司監督も来場した。宮沢は「賞に合ったパフォーマンスができるよう頑張りたい」と喜んだ。鈴木との共演を振り返り「台本に縛られず、瞬間の出来事を大事にして作品を作った。作品への思い、準備の仕方がダントツで、勉強になった」。 鈴木は作品について「人を愛するのはあいまいなこと。純粋な愛かわがままか、わがままはエゴなのか、愛の一部分なのか、考えながら演じた」と明かした。同性愛者を演じるために多くの当事者に話を聞いたという。「自分が何も知らなかったと気づいた。異性愛者には当たり前のことが、その選択肢すらない。この映画に参加することに演技以上の責任を感じ、それが情熱になったと思う」 松永監督は「共演の阿川佐和子さんと3人が、引っ張ってくれた。スタッフも力を出し切ってくれたおかげかな。ここに立てるのは幸せ」と祝福。鈴木が「こんなきらびやかな場所に立てるとは、驚き」と言えば、宮沢も「また亮平さんと芝居をしたい。バディーでも敵でも面白いかな」。息の合ったところを見せていた。 【第78回毎日映コン表彰式 関連記事】 八木勇征「萩原利久の気持ちも背負っています。幸せです」 ほやマンスーツ・アフロvsヒョウ柄ドレス・サリngROCK 「憧れのゴジラ 関われてうれしい」 杉咲花「かけがえのない出会い」 広瀬すず「アイナを支えた」 「こんなこともあるんだ」阪本順治 「祈り込めた」塚本晋也
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。女優賞は同世代の2人。表彰式には2023年を代表する受賞者に加え、スタッフや共演者も祝福に駆けつけ、華やかなステージとなった。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 女優助演賞は「キリエのうた」の広瀬すず。映画初出演のアイナ・ジ・エンドの相手役。「アイナさんを支えて、役を生きることしかできないと思っていた」と撮影を振り返った。岩井俊二監督とは、「ラストレター」に続いて2作目。結婚詐欺師の役に「なんで私?と思った」と笑いながら言えば、岩井監督は「いたいけな女子高生から打って変わった〝いただき女子〟をすてきに演じてくれた。次は120%の広瀬すずで」とラブコール。 女優主演賞は「市子」の杉咲花。「映画は1人で成し遂げられない。関わった人と喜びを分け合いたい。市子とはかけがえのない出会いになった」と喜んだ。ただ「評価は他者の中にあるもの。引き続き粛々と作品と向き合いたい」と控えめだった。 杉咲に手紙で出演依頼をしたという戸田彬弘監督も登場。杉咲の「目に引力を感じ、ダメ元で」というが、実は代筆だったとか。「字が下手で……」。「杉咲さんのおかげで作品が大きくなり評価された」と感謝の言葉。杉咲は「自分の分岐点になる」との内容に「勝負に出ようとする作品で自分を求めてくれたことがうれしい。脚本を読んで、どんな場所に連れて行ってくれるか未知の感覚で、早く現場に行きたいと思った」と振り返った。 田中絹代賞の薬師丸ひろ子は出席できず、手紙を寄せた。「大先輩の名前を冠した賞は、身に余る光栄です。人生を重ねていくからこそできる役があると教えてくれた。まだまだ近づきたいし、もっと頑張りなさいと言われた気がします」 【第78回毎日映コン表彰式 関連記事】 八木勇征「萩原利久の気持ちも背負っています。幸せです」 ほやマンスーツ・アフロvsヒョウ柄ドレス・サリngROCK 「憧れのゴジラ 関われてうれしい」 「責任感が情熱に」鈴木亮平 「また一緒に」宮沢氷魚 「こんなこともあるんだ」阪本順治 「祈り込めた」塚本晋也
第78回毎日映画コンクール表彰式は14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。2023年を代表する日本映画大賞、これに次ぐ日本映画優秀賞の表彰ではスタッフも登壇し、祝福した。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 日本映画優秀賞の「ほかげ」は、塚本晋也監督が戦争の残した傷痕をヤミ市を舞台に描いた。スタッフと共に登壇した塚本監督は「非常に少ない要素で戦後の雰囲気を伝えられるかという勝負ができたのは、スタッフのおかげ」。ウクライナやガザ地区での戦闘に「底が抜けてしまった世界で、子供の未来が怖くない世の中になるようにと祈りを込めた」と訴えた。 日本映画大賞は「せかいのおきく」。阪本監督はプロデューサーで美術監督の原田満生、録音賞の志満と舞台に上がった。「4年前にパイロット版のつもりで15分の短編を作り、やっと長編になったが撮影は12日。クランクアップでも配給が決まっていなかった。受賞してこんなこともあるんだなという気持ちでいっぱい」 【第78回毎日映コン表彰式 関連記事】 八木勇征「萩原利久の気持ちも背負っています。幸せです」 ほやマンスーツ・アフロvsヒョウ柄ドレス・サリngROCK 「憧れのゴジラ 関われてうれしい」 「責任感が情熱に」鈴木亮平 「また一緒に」宮沢氷魚 杉咲花「かけがえのない出会い」 広瀬すず「アイナを支えた」
「第78回毎日映画コンクール」(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催)の表彰式が14日、東京都目黒区のめぐろパーシモンホールで行われた。2023年の日本映画を代表する顔ぶれが一堂に会した。 女優主演賞の杉咲花は「市子」で他人の名前をかたって生きる女性を演じた。「映画作りは1人で成し遂げられない。市子という役と、かけがえのない出会いができた。作品と関わった人全員と、喜びを分け合いたい。評価は他者の中にあるものだけれど、映画に興味を持ってもらえるのはうれしい」と喜んだ。 男優主演賞の鈴木亮平と同助演賞の宮沢氷魚は、ともに「エゴイスト」に出演し、松永大司監督とそろって登壇。同性愛を描いた作品への出演を、鈴木は「間違いなく描くという責任感が情熱になった」、宮沢は「役者への思いが変わった大きな作品」と振り返った。ダブル受賞を「思ってもみなかった」と喜んだ。 女優助演賞の広瀬すずは「キリエのうた」で結婚詐欺の女性を好演。舞台に並んだ岩井俊二監督に「なんで私がこの役?と思ったけど、自由に動いているところを切り取ってくれた」と感謝した。 「さよなら ほやマン」でスポニチグランプリ新人賞のアフロは、映画で着用した「ほやマン」の衣装で登場。「魂がこもったスーツです」と会場を沸かせた。映画初出演の「BAD LANDS バッド・ランズ」で同賞のサリngROCKは「私ではなく、作品への賞だと思います」とあいさつ。原田眞人監督から「世界を目指しましょう」との祝福の手紙が寄せられ「頑張ります」と宣言した。 日本映画大賞の「せかいのおきく」は、脚本賞、録音賞と合わせ3冠を受賞。江戸時代の循環型社会を描いた作品で、阪本順治監督は「現代につながるように作った」と思いを語った。公開まで4年を要したことを振り返り「どうなることかと思ったが、こんなことってあるんだな、という気持ちでいっぱい」と感慨深げだった。 日本映画優秀賞の「ほかげ」では塚本晋也監督とスタッフがそろって登場。終戦直後の日本を舞台に戦争の傷痕を描いた。「子供たちの未来が怖くない世の中になるよう、祈りを込めた」と呼びかけた。 障害者施設殺傷事件を基にした「月」で監督賞の石井裕也は、同作のプロデューサーで完成前に死去した河村光庸の名前を挙げ「同調圧力と闘って映画を作った人。エッセンスを引き継いで頑張りたい」と誓った。
第65回毎日映コンの「海炭市叙景」(2010年)に続き、同じ熊切和嘉監督作品で2回目の音楽賞を受賞する。多岐にわたる音楽活動で知られ、「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)の音楽を担当した石橋英子との共同作業でも注目を集めるなど、ジャンルを超えた音楽活動を展開している。インタビューに応じてくれたのも東京・渋谷のライブハウスでの公演の前。「映画が若い時から大好き。毎日1、2本は見ている」と映画愛、それも日本映画への愛情にあふれた言葉を何度も口にした。外国語なまりだが流ちょうな日本語で一生懸命に喜びを語ってくれた。 【選考経過と講評】 ■スタッフ部門 音楽賞 ジム・オルーク「658km、陽子の旅」全員が高評価 熊切監督と4作目で2度目の受賞 オルークは、「海炭市叙景」のほか「夏の終り」(13年)、「私の男」(14年)と熊切監督作品の音楽を担当した。楽曲は作品にフィットして、印象的かつ効果的に映画の世界を支えている。「今回は静かな映画なので、熊切監督は私に合うと思ってくれたのだろう」 通常、映画の音楽を依頼されると、脚本を読んでどんな楽器の音色がいいか考えるという。「一番大事なのはどんな音色がその映画(の脚本)に合うか。それはどんな楽器を使うかとも関係する。まずどんな音のトーンがいいか、キーになる音色は何かなどを考えてから楽器を決める」。しかし「映像を見てから意見が変わることもあるから、編集された映像が手元に届くまでは、大抵音楽は作らない」。 ©「658km、陽子の旅」製作委員会 マリンバではなくギターで この作品では、当初「マリンバを使おう」と考えていた。しかし、映像を見て「合わない」とすぐに判断。ほぼ同時に、熊切監督から「ギターでお願いします、と言われた」と笑いながら話した。オルーク自身は「映画音楽を作る時はあまりギターを使いたくない」という気持ちもあったが、これまでも熊切監督の依頼は「よくギターといってくる。今回もエンドロール以外はギターだけを使った」と話した。 音楽の中身や感触など具体的なリクエストは熊切監督からあったのだろうか。「具体的なものはあまりなかったが、音楽を挿入するシーンの指示はあった。編集された映画を見て、これまでの作品でもそうだったように、どこに音楽を入れるか、考えはほぼ一致。特に今回は100%同じだった」と熊切監督の意向と重なった。音楽は終盤に向かうにつれて音色が重層的になっていく。「ミキシングの時に、エレキギターの音色を調整するミックスが大事だった」と話した。 陽子の心の痛みを感じた 映画は、フリーターとして日々をなんとなく過ごしてきた42歳の独身女性、陽子が主人公。夢への挑戦を反対され20年以上疎遠になっていた父の訃報を受け、いとこやその家族と東京から故郷の青森まで車で向かう。途中で置き去りにされヒッチハイクで故郷を目指す中で出会う人々との交流を描いた作品だ。音楽が入るのは4、5回。不安や孤独感など主人公の心が大きく揺れる映像の際に流れ、音楽自体も流れるたびに旋律が複雑になっていく。「メインのメロディーの上にハーモニーを録音して重ねている。陽子の感情の流れが重なっていくうちに重層的な音」を生み出していった。 「発する言葉よりも陽子の心が見えてくる作品。彼女のキャラクターは言葉をあまりうまく使うことができない」と内面の描写に関心を寄せた。本作を見て最も心に浮かんだことを聞いてみた。「映像や編集のペースから、彼女の心の痛みを感じることができた」と言うのだ。「父の葬式に出るというのは表の目的であって、自分を見つけるための心の動きが一番興味深かった」と、心の痛みを音楽でも提示してみせた。 アクションでないSFの音楽をやってみたい さらに続ける。「陽子を少し嫌な女性と思う人がいるかもしれないが、私はそう思わない。作品は、彼女が変わっていく可能性を、見た人が感じるところで終わる。どう感じるかは観客それぞれでいい」と作品への思いを語った。 「私はもともと(内容的に)暗くてつらい映画が大好き。熊切監督の作品は全部見ていて、いろんなジャンルの映画を作っているが、私が特に好きなのはその中でも暗い映画」という。この作品も終盤に少し希望のようなものが見えるが、全体のトーンは決して明るくない。それでも「もっと暗い映画が好き」と言ってほほ笑んだ。そのうえで、やってみたい映画の音楽は「アクションが主ではない、『スター・ウォーズ』のようではないSF。そうした作品で声がかかったら喜んでやりたいが、日本にはあまりない。『太陽を盗んだ男』(1979年)ぐらいしか思いつかない」と日本映画への造詣の深さも感じさせた。 映画作りに参加したい 普段は音楽のエンジニアであり、アレンジやプロデュースなど多面的にかかわっている。「若い時からパソコンで(音を)プログラミングするのが好き。一人でスタジオで仕事をするのがハッピー。楽器を演奏するのはあまり興味がない」という。 活動の拠点を日本に移してから20年近くになる。「子供の時から映画を撮りたいと思っていた。ただ、多くの人の声に耳を傾けながら、同時にお願いもしていくような監督の仕事はむいていない。映画のコンポーザーではなく、映画作りに参加したいと思ってきた」。根っからの映画好きで今もそれは変わらない。 若松、足立、今村、増村、成瀬……止まらぬ日本映画愛 海外にいた80年代、90年代に日本映画をたくさん見ていて関心も深い。「高校生の頃から『天使の恍惚』など若松孝二監督や足立正生監督のアングラ映画を見たし、今村昌平監督作品も大好きだし、増村保造監督の作品も」と日本映画のことを話し出したら止まらない。成瀬巳喜男監督の名前も飛び出した。以前に、若松組のスタッフからこんな話も聞いた。「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2008年)の製作時に、オルーク本人が若松監督に直接「音楽担当として参加したい」と願い出たというのだ。 「映画はさまざまなアートが集まっていて素晴らしいが、その混ざり方が大事。全部で一つの作品になるのが一番大事」と繰り返し強調した。音楽が目立つ作品、その逆の作品も「あっていいと思う」と話すが、この作品でも音楽は映画を形作る大きな要素の一つとして存在し、深い余韻を残している。 【第78回毎日映画コンクール 受賞者インタビュー】 女優主演賞 杉咲花 「表現しない」演技 「他人も役も分からない。だから想像できる」 男優主演賞 鈴木亮平 セクシュアリティーに悩む人々への「使命」感じた 男優助演賞 宮沢氷魚が何十回も撮り直した「エゴイスト」を通じて気づいたこと 女優助演賞 広瀬すず「キリエのうた」 アイナと共演に即決でも結婚詐欺師役に「なんで私⁉」 スポニチグランプリ新人賞 サリngROCK 「絶対イヤ」出演3度断った「BAD LANDS」 受賞に「笑いました」 田中絹代賞 薬師丸ひろ子 「偉いな、頑張ってるな」高倉健の言葉に支えられて 日本映画大賞「せかいのおきく」阪本順治監督 業界にけんかを売ったふん尿譚「こういうこともあるんだな」 日本映画優秀賞「ほかげ」 塚本晋也監督 「どうせなら思い切ってちっちゃく」逆転の発想が生んだ敗戦直後の日本のリアル TSUTAYA DISCAS映画ファン賞「美しい彼 eternal」 酒井麻衣監督 BL映画も「人の感情を丹念に」 監督賞 石井裕也「月」「人とは何か」問い続けるしかない 連続殺傷事件を映画化した覚悟と葛藤 それでも「やってよかった」 撮影賞 鎌苅洋一「月」 政治的正しさより大事なものが、映画にはある 録音賞 志満順一「せかいのおきく」 江戸時代の四季を音で演出 「カエルの声も時代物」 美術賞 上條安里「ゴジラ-1.0」 「震電の知識は日本で五指。徹底的に調べた」 アニメーション映画賞「アリスとテレスのまぼろし工場」 岡田麿里監督 「恋する思いが世界を壊す」 閉塞を打ち破るエネルギーに 大藤信郎賞「君たちはどう生きるか」 「コーヒー飲む?」 「やらない」と決めていた鈴木敏夫を翻意させた宮崎駿の一言 ドキュメンタリー映画賞「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」寺田和弘監督 〝作る〟より〝伝える〟「報道的な中立離れ遺族目線で」
鈴木隆
2024.2.08
「ゴジラ-1.0」は作品部門、監督賞、撮影賞など6賞で候補入りしたが、受賞は美術賞だけだった。「すごいうれしいですけど、自分1人か、と」。第60回に次いで2度目の美術賞。この時の対象作品「ALWAYS 三丁目の夕日」も、「ゴジラ-1.0」と同じ山崎貴監督だった。「山崎さんの作品、毎日映コンでは受賞しないんですよね……」 【選考経過と講評】 ■スタッフ部門 美術賞 上條安里「ゴジラ-1.0」 終戦後の焼け跡 膨大な仕事量 どこからCGか、きっと分からない 山崎監督のデビュー作「ジュブナイル」(2000年)から組んできた。CM美術を長く手がけていたが、付き合いのあった制作会社ロボットの阿部秀司から声が掛かり、映画の世界へ。以来、ほとんどの山崎作品を担当してきた。「ある程度任せてくれるし、お互いの好みが分かってるんで。主人公の家はちらかってないと納得いかないとか。2人とも仕事机の周りはガチャガチャです」。けっこう似たもの同士らしい。 「ゴジラ-1.0」は、白組による最先端のコンピューターグラフィックス(CG)技術と上條ら美術の組み合わせで、終戦直後の東京をゴジラが襲う、迫真の映像を作り上げた。「どこまで美術が作ってるか、絶対分からないでしょうね。ぼくも分からないぐらい。だから、美術が何をやったかと聞かれると、答えるのが難しい」 「ゴジラ-1.0」©2023 TOHO CO.,LTD. 集めた木材を御殿場で燃やし 山崎の脚本からイメージをつかみ、美術のデザインを3Dで起こす。白組のVFX(視覚効果)ディレクター、渋谷紀世子らを交えて、セットとCGの分担を詰めていく。今回の美術の最大の仕事は、終戦直後の東京のセットだった。日本で最も広い、1415平方メートルの東宝スタジオ8ステージいっぱいに、戦後の町並みを再現した。 「半分がバラック、残りをヤミ市。とにかくがれきを集めたり作ったり、延々とやってました。Netflixの『今際の国のアリス』の撮影隊が発泡スチロールで作った山のようながれきを全部もらってきたり、家具とか柱とかを集めて、スタジオでは火が使えないから静岡・御殿場まで行って燃やしたり。柱をうろこ状にするのに、とことん焼いて黒焦げにしないとリアルにならない。あぶったり黒く塗ったたりするだけじゃだめなんです」 がれきに始まってがれきに終わった 「バラックも4段階あって、ちょっとずつ違います」。終戦直後の焼け野原から、ゴジラが現れる数年後まで、日本の復興の様子を追っていく。がれきのセットは「心配したけど、そこそこいいのができた」と一安心。ただ欲を言えば、もっと見通しをよくしたかったという。「バラックのシーンは、スカッと広がりがある画(え)がよかった。ヌケをよくしたかったけど、そうなると全カットでCGを入れなきゃならなくなる。CGはゴジラに集中したいということで、壁や建物を入れてなるべく抜けないようにしました」 スタジオで使ったがれきは、地方で撮影した銀座の場面で再利用。「撮影場所の駐車場に並べて。ただそこも道路と地面のほかはほとんどCGです」。せっかく作った大量のがれきなのに、保管場所がなくすべて廃棄したとか。「捨てるのにもお金かかるし、もったいなかった」。ともあれ「がれきに始まって、がれきに終わった感じでした」。 誰にも文句言わせないレベル もう一つ、手間暇をかけて造ったのが、映画のクライマックスで重要な役割を果たす戦闘機「震電」だ。戦争末期、日本軍が米軍のB29に対抗するために開発を進め、試作機まで造られたものの実用化できなかった幻の戦闘機。 山崎・上條コンビは「永遠の0」(13年)で零式戦闘機を本物に忠実に造り上げた。戦争映画で登場する兵器に、マニアは微に入り細をうがって、ここが違う、あそこがウソと突っ込んでくる。しかし映画作りには時間もお金もかかり、正確さには限界がある。「どのレベルまでやるかですよね」。1000人いるそこそこ詳しい人が見て納得する程度か、全国で五本の指に入る超マニアを黙らせるか。「零戦は5人のレベル。絶対、誰にも文句は言わせないと」 震電の再現にあたっても「徹底的に調べました」。資料をあさり、素人のファンが実物大で再現したものを北海道まで見に行き、開発に関わった関係者の子孫にも会った。「日本で何番目かに詳しくなりましたよ」 誰も見たことのない実物大の精密な「震電」 資料に忠実に、足りない部分は補足し改良も加えながら制作。「出来上がった時はオーッと感動しました。誰も見たことないですからね」。震電は、攻撃性を高めるために機体後部にプロペラを装着、前部には30ミリ機銃を積んだ独特のスタイル。空中戦に備えて機動性も重視している。しかし「造ってびっくりしました。でかいんですよ。しかもバランスが悪い」。 機体を支えるのは細い斜めの脚が3本だけ。「後ろに付いたプロペラは、着陸の時に地面にぶつかってしまう。不安定で、重りを入れないとひっくり返っちゃう。撮影中は危ないんで上からつっていました」。戦時中もテスト飛行はされたが、結果は散々だったという。「脚が収納できないし、全力で飛んでもいない。回転したら落ちる。しかも重たい機銃を積んでない状態だった。エンジンの開発もしていない。試作の試作といった段階で、終戦が延びても実用化されてなかったと思います」 映画では、神木隆之介演じる敷島が操縦し、ゴジラを翻弄(ほんろう)して大活躍。おまけに実際にはなかった脱出装置まで付いている。「脱出装置は、監督の絶対付けたいという要求です。調べてみたら、装着していた飛行機がドイツにあったんです」。映画の中の震電は、よく見ると操縦席にドイツ語の表記がある。「あれを見て、脱出装置に気づいたマニアもいたみたい」 「だって山崎組だから。造るでしょ」 一方で、映画の前半に出てくる零戦は、今回ほとんどCGだった。「コックピットとキャノピーだけ。外観も造ってません」。だったら震電もできそうなのに、なぜ? 「だって山崎組だから、当然造るんで。CGなんて考えない」。やはり似たもの同士なのだ。 高校時代までは映画マニアだったが、映画界で働くとは思っていなかったという。美大を中退してアルバイトとしてCMの制作現場に飛び込んだ。「CMバブル、邦画バブルの時代には大きな仕事もできたし、山崎監督というヒットメーカーとも仕事ができている。この道でよかったです」 オスカー受賞も夢じゃない デザインはすべて3D。3Dプリンターやレーザーカットといった技術は進化しているものの、「美術の仕事は変わらない」という。「基本的にものを作り上げる作業は同じ。ただ、作る範囲は小さくなっています」。心がけているのは「やりすぎないことかな。美術が目につくようなことは避けようと思っています。見る人がスッと映画に入るための導入、匂いみたいなもの。目立ってしまうと気になるじゃないですか。そういうとこがリアリティーにもつながるのでは」 もう一つは「整えすぎないこと」。取材場所の机にあった名刺や水筒をきちんと並べて「これ、気持ち悪いじゃないですか」。ザッと傾けたり散らしたりして「この方がリアルに見えるでしょ」。現実は規格通りではないし、正統なものばかりではない。「セット臭くなってしまうんですよ。ちょっとヘンなものを混ぜたほうがいい」 「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「海賊とよばれた男」で昭和を再現し、「永遠の0」「アルキメデスの大戦」と戦争も調べ尽くした。「狭くて深い知識は、いっぱい」。「ゴジラ-1.0」は、米アカデミー賞の視覚効果賞部門で候補になった。「受賞したら、快挙ですよね」。山崎組、いよいよ世界か。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 【第78回毎日映画コンクール 受賞者インタビュー】 女優主演賞 杉咲花 「表現しない」演技 「他人も役も分からない。だから想像できる」 男優主演賞 鈴木亮平 セクシュアリティーに悩む人々への「使命」感じた 男優助演賞 宮沢氷魚が何十回も撮り直した「エゴイスト」を通じて気づいたこと 女優助演賞 広瀬すず「キリエのうた」 アイナと共演に即決でも結婚詐欺師役に「なんで私⁉」 スポニチグランプリ新人賞 サリngROCK 「絶対イヤ」出演3度断った「BAD LANDS」 受賞に「笑いました」 田中絹代賞 薬師丸ひろ子 「偉いな、頑張ってるな」高倉健の言葉に支えられて 日本映画大賞「せかいのおきく」阪本順治監督 業界にけんかを売ったふん尿譚「こういうこともあるんだな」 日本映画優秀賞「ほかげ」 塚本晋也監督 「どうせなら思い切ってちっちゃく」逆転の発想が生んだ敗戦直後の日本のリアル TSUTAYA DISCAS映画ファン賞「美しい彼 eternal」 酒井麻衣監督 BL映画も「人の感情を丹念に」 監督賞 石井裕也「月」「人とは何か」問い続けるしかない 連続殺傷事件を映画化した覚悟と葛藤 それでも「やってよかった」 撮影賞 鎌苅洋一「月」 政治的正しさより大事なものが、映画にはある 録音賞 志満順一「せかいのおきく」 江戸時代の四季を音で演出 「カエルの声も時代物」 アニメーション映画賞「アリスとテレスのまぼろし工場」 岡田麿里監督 「恋する思いが世界を壊す」 閉塞を打ち破るエネルギーに 大藤信郎賞「君たちはどう生きるか」 「コーヒー飲む?」 「やらない」と決めていた鈴木敏夫を翻意させた宮崎駿の一言 ドキュメンタリー映画賞「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」寺田和弘監督 〝作る〟より〝伝える〟「報道的な中立離れ遺族目線で」
勝田友巳
2024.2.07
バンド「MOROHA」のMCとして活動するミュージシャン。初めて本格的に出演した映画「さよなら ほやマン」で、宮城・石巻の離島で弟と暮らす兄アキラを演じ、見事受賞。撮影後「アキラの葛藤は俺のものだった」と言うほど、役と一体化した。その言葉にはどんな意味が込められていたのか。 【選考経過・講評】 スポニチグランプリ新人賞 アフロ 役を生み表現者の本領発揮 誰もリスクしょわねえのかよ 「映画の仕事に携わっている友達や先輩からずっと『絶対役者は向いてるよ』って言われてきたんですけど、誰もオファーしてくれない。なんだリスクはしょわねえのかよ」と、いじけていたが、ある日、楽屋に庄司輝秋監督がやって来て「あなたにしかできない役です」と台本を渡してきたという。 「ついにリスクをしょいますよという男が来たんですけど、台本にでっかく『ほやマン』と書いてあって、これじゃないと思った」と笑う。その表情を見た庄司監督が「中を読んでください。読んでいただいたら、何か感じるものがあると思う」と言った。「それで読んでみたら、自分になぜオファーが来たのかよくわかる作品だった」 それでも迷いは消えない。そこで、ミュージシャンという本分に委ねることにした。「自分はラップをやっているので、アキラという役になりきって作詞できるか考えてみた」。すると、曲ができあがり、出演を決意したという。 「さよなら ほやマン」©2023 SIGLOOFFICE SHIROUSRooftopLONGRIDE 海に囲まれたアキラ 山で育った自分 アキラは、東日本大震災で両親が行方不明となり、知的障害のある弟シゲル(黒崎煌代)を守りながら、漁師をしている。そこに東京から謎の漫画家・美晴(呉城久美)が島を訪れ、2人の家に住み込むようになる。奇妙な共同生活の中でさまざまな騒動が起き、アキラはやがて、「もっとクリエーティブなことをしたい」「島を出たい」という焦燥感を募らせていく。 アフロは山に囲まれた長野県の村で生まれ育った。「都会から来た20代、30代の人が、10代の俺の横で『すごくいいところだね。年取ったらこういうとこ住みたいな』って言うんですよ。俺は胸がキュッとなって。子どもだから、ここで住むことにあらがうことができない」と振り返る。「仲間と山を越えて東京に出ることを『脱獄』と呼んでいた。自分たちの人生がいまいちいけてないのは、この山々のせいだと思っていた」。海に囲まれて育ったアキラと、山に囲まれて育った自分。共感から自然と歌詞がわいてきた。 小型船舶免許、素潜り練習「気合あります!」 ただ、俳優ではない自分がうまく演じられるか不安はあったという。そこで、撮影前に小型船舶の免許を取り、素潜りの練習に通った。「役作りの側面もあったけれど、『(俳優は)初心者だけど、気合はあります。本気で頑張ります』というお土産のつもりだった」と話す。するとロケ地となった石巻・網地島の漁師たちが喜んでくれた。「本気でやる気だね、あんちゃんって言って、ロープの縛り方を教えてくれて、船や港での撮影にも協力してくれた」と感謝する。 黒崎や呉城ら共演者にも助けられたという。「(3人は)民宿みたいなところで、ドア1枚隔てたところで寝泊まりしていて、夜寝る前にリビングに集まってセリフ合わせをしたり、その時の役の心持ちについて認識し合ったり、黒崎にも呉城さんにもいろいろ教えてもらった」 アキラは自分の思うがままに生きる美晴にいらだちつつも刺激を受け、自分の生き方を見つめ直す。美晴はわがままそうでいて、実は兄弟を見守っている。アキラと美晴は恋愛関係にはなかなか発展しないが、島の坂で互いに思いをぶつけ合うシーンがある。「監督とは恋愛の要素があまり出すぎない方がいいよね、って話をした。恋愛ドラマ的なときめきとは違う、もっと深い人間的な包容力に包まれているから。坂のシーンは互いの深いところに手を入れて内臓をかき混ぜるような行為。語弊があるかもしれないけど、ラブシーンだったような気がしますね」 演技と音楽 切り離せない 演技をすることは自身の音楽活動と切り離せなかったという。「監督が自分に何を求めているのか。きっと自分が音楽をやっていく中でさらしてきたものを欲しいと思ってくれたと思うので、それを存分に出そうと臨んだ」と語る。 冒頭の「アキラの葛藤は俺のものだった」という言葉も、自身の音楽活動とつながっている。実は、2人組のMOROHAの相方で、同じ長野県出身のUKが昨年、パニック障害を発症し、ライブ活動を一時期休止した。「15年一緒にやってきて、深いところでつながっている。そこは、アキラがシゲルに抱いている気持ちとつながるものがある」 ただ、映画の中で、両親が海で行方不明になったため、兄弟は海産物を食べないことにしているのに、シゲルが兄に隠れてほやを食べているのをアキラが見つけてぼう然とするシーンが、胸に刺さったという。「多分、あいつ(UK)にはあいつの葛藤があって、しんどいってことを俺に言えない時もあったんだろうな、って思った。それはアキラが抱いた『ああ、シゲルは海のもの食べたかったんだ。俺に付き合って食べずにいたんだ』っていう感じと同じ。けど、アキラとシゲルはあの出来事があってさらに深くつながり合う兄弟になる。(UKとも)そういうふうにしていきたいですね」 これからも音楽活動を軸にしつつ、「ミュージシャンとしてのパワーを映画に注ぎ込んでくれ、というオファーをもらえることがあったらいいな」と俳優業にも意欲を示す。「きっとオファーが来ますよ」と伝えると、「来ますかね。いつも言うんですけど、来ますって言ってくれた人に1年後、オファーが1個も来なかったら飯おごってもらうことにしているんですよ。本当に大丈夫ですね」と笑わせてくれた。 【第78回毎日映画コンクール 受賞者インタビュー】 女優主演賞 杉咲花 「表現しない」演技 「他人も役も分からない。だから想像できる」 男優主演賞 鈴木亮平 セクシュアリティーに悩む人々への「使命」感じた 男優助演賞 宮沢氷魚が何十回も撮り直した「エゴイスト」を通じて気づいたこと 女優助演賞 広瀬すず「キリエのうた」 アイナと共演に即決でも結婚詐欺師役に「なんで私⁉」 スポニチグランプリ新人賞 サリngROCK 「絶対イヤ」出演3度断った「BAD LANDS」 受賞に「笑いました」 田中絹代賞 薬師丸ひろ子 「偉いな、頑張ってるな」高倉健の言葉に支えられて 日本映画大賞「せかいのおきく」阪本順治監督 業界にけんかを売ったふん尿譚「こういうこともあるんだな」 日本映画優秀賞「ほかげ」 塚本晋也監督 「どうせなら思い切ってちっちゃく」逆転の発想が生んだ敗戦直後の日本のリアル TSUTAYA DISCAS映画ファン賞「美しい彼 eternal」 酒井麻衣監督 BL映画も「人の感情を丹念に」 監督賞 石井裕也「月」「人とは何か」問い続けるしかない 連続殺傷事件を映画化した覚悟と葛藤 それでも「やってよかった」 撮影賞 鎌苅洋一「月」 政治的正しさより大事なものが、映画にはある 録音賞 志満順一「せかいのおきく」 江戸時代の四季を音で演出 「カエルの声も時代物」 アニメーション映画賞「アリスとテレスのまぼろし工場」 岡田麿里監督 「恋する思いが世界を壊す」 閉塞を打ち破るエネルギーに 大藤信郎賞「君たちはどう生きるか」 「コーヒー飲む?」 「やらない」と決めていた鈴木敏夫を翻意させた宮崎駿の一言 ドキュメンタリー映画賞「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」寺田和弘監督 〝作る〟より〝伝える〟「報道的な中立離れ遺族目線で」
木村光則
2024.2.06
2度目の毎日映コン録音賞。前回の「北のカナリアたち」(2012年)も、阪本順治監督と組んだ。「日本で映画をやってる限り、もらって一番うれしい賞ですよね、いつかは絶対毎日コンと、みんなの憧れじゃないか」 【選考経過と講評】 ■スタッフ部門 録音賞 志満順一「せかいのおきく」 セリフ届ける技術秀逸 白黒スタンダードだからモノラルで 「せかいのおきく」は、江戸時代の庶民の生活と恋模様を、下肥え買いの青年を主人公に描いた時代劇。低予算、白黒、ふん尿が〝主役〟と、日本映画界の主流とは遠く離れた異色作。「自主製作の低予算映画と言われて、最初のロケ撮影は自分の車に機材積んで1人で行ったんだ。助手も雇えなかった」。そんな条件にもかかわらず、撮影の笠松則通、照明の杉本崇と阪本組常連のベテランが結集。 資金調達は製作しながら。4年前と3年前に15分ずつの短編を撮った後、ようやく出資者が現れて長編映画に仕立てた。阪本監督は先にあった短編を元に脚本を執筆。「ムダがなくて、素晴らしい脚本でしたよ」 録音としても、今回は異色作。音響技術も日進月歩。多チャンネル化が進み、映画館には四方にたくさんのスピーカーが設置されて、5.1チャンネル、7.1チャンネルと立体的に音が聞こえてくる。しかし「せかいのおきく」はそうした流れに逆らうように、モノラルを志向した。音は正面からしか聞こえない。 「白黒スタンダードだから、音もモノラルにしようと。スクリーンが狭いのに、その外から音が出たら気持ち悪いでしょ」。とはいえ今は、5.1チャンネルが標準。モノラルに対応していない。「正面のスピーカーだけで音を表現することができなくなってる。自分もそれに慣れちゃってたし」。と言いながらも、そこは昔取った杵柄(きねづか)。「音の強弱やぼかしで全体の広がりを表現した。先人は大変だったと思いましたよ」。映画は9章立ての構成で、各章ラストカットだけカラー映像。ここには広がりのある音を付けた。「効果部にムチャぶりしてね、ここだけ5.1チャンネルに広げてもらった」。狙い通りである。 「せかいのおきく」 ©2023 FANTASIA 撮影は12日 四季は音で表す 撮影は全部で12日。それでも物語は四季を描く。音も季節を表現する大事な役割を担った。「四季折々を音で分かるようにするのが、脚本を読んだ時の第1テーマ」。撮影は初夏。「ラッキーだった。音の出し入れがしやすかったです」 セミが鳴く前だったのは幸運の一つ。「セミの声は録音部の天敵。真夏の撮影だと周囲のセミを追い払わなきゃならないけど、その人手はなかったからね」。水辺のカエルもやっかいだ。「ウシガエルのオタマジャクシがうじゃうじゃいて、カエルになって鳴き始める前だったのもついていた。あれはずっと後になって入ってきたから、江戸にはいなかった。江戸時代にいたと思われるカエルの音を持ってきた」。同じロケ地で撮影した夏の場面では「ウグイスの幼い声を、ちゃんと『ホーホケキョ』と鳴いてるように付け替えた。音ではけっこう遊びました」。 セリフがメインの時代劇 低予算は経験値で補う 時代劇は、衣装もセットもロケ撮影も、現代劇より手間とお金がかかる。音も同様で、神経を使う。「現代劇なら、場面の場所全体の音を意識して録(と)ってくんですけど、時代劇は現代の音はできるだけ入れたくない。現場のセリフをメインにせざるを得ない」。俳優に着けたワイヤレスマイクでセリフを拾うが、「音が詰まった感じになるので、なるべくガンマイクも使うようにしました」。 長屋の住人たちが井戸端に集合する場面では、ワイヤレスマイクが足りなくなった。「小規模低予算で、長屋の人たち全員分なかったんです。主役の3人と女性に着けて、後はマイクを立てたのと、マスターショットとカバーの撮影で補いました。長屋の面々を演じた俳優さんもベテランぞろいで、きちっと芝居できる人ばっかり。セリフの間とかかぶらないようにとか、ほっといてもやってくれた」。不足を補って余りある、ベテランの経験と知恵である。 音を作るにあたっては「セリフを大事にしてます」と言う。「脚本に書かれているセリフを聞き流していいとは思わない。僕らは脚本から読んでるしテストで何回も聞いてるから、はっきり聞こえなくても雰囲気で流すことがある。でも、映画館で初めて見る人にちゃんと分かるようにしないと。耳に届くように整音するし、現場で録れなかったらオンリーで録る。仕上げで整音してもらう。そこは追い込みます」。選考ではまさに「セリフがクリアに聞き取れる」という技術が評価された。 ジャンケンで負けて録音部へ 映画界に入ったのは20代。入学した明治学院大学で、先輩たちがフォーク歌手、高田渡のドキュメンタリー「吉祥寺発赤い電車」を16ミリフィルムで自主製作していた。その撮影を手伝い各地で自主上映し、続けて長崎・軍艦島のドキュメンタリー製作にも参加。許可が下りないままのゲリラ撮影にも協力した。 熱を入れすぎて、いざ就職という段になると入れてくれそうな映画会社は見当たらない。先輩のコネを伝い、「ジャンケンで負けて」録音技師の元へ。右も左も分からないまま、暴走族を追ったドキュメンタリー「ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR」(1976年、柳町光男監督)に参加。後に劇映画に転じたが、現場では「マイクってこうやって持つのか」というところから始めたという。 「録音が向いてるなと思ったのは、最初から最後まで作品に関われるところかな。脚本からイメージして音を作って、その通りになっていくのが面白かった。音で映像の印象が変わる、音楽の入れどころでシーンの感情の持っていき方が変わる」。音は映画に不可欠ながら、目立ってはいけない。「音を意識されるのもよくない。むしろ聞き取りづらいセリフに引っかからず、観客がスーッと入れるのが大事。画面を見て感情移入してるから、それに沿って考えなきゃいけないんです」 脚本をちゃんと読めよ 映画界に入って半世紀近く。1997年には浦田和治、弦巻裕と音響制作会社「サウンドデザイン ユルタ」を設立、日本映画の代表的作品を手がけてきた。日本映画・テレビ録音協会の理事長として、業界の発展にも目を配る。課題は後進育成だ。若手の志願者が少なく、入ってきても過酷さに耐えられない。「危機的状況」と話す。日本映画制作適正化機構の設立に協力し、環境改善にも取り組んでいる。 助手たちには「脚本を読みなさい、やるべきことが書いてある」とアドバイスするという。「物語の舞台になる場所を考えた音の設計をして、現場に臨めということ。住宅街なら、近くに電車は通っているか、とか。撮影してる時にたまたま電車が通りましたじゃなくて、電車を想定してどう作り込むかまで考えてデザインしていけよと」 「せかいのおきく」には、江戸・木挽町の場面がある。「古地図を見ると、そばに掘割が流れている。それなら船頭の声が聞こえるかな、とか。実際にその音は付けなかったけど、こういう場所と分かって作ってるのとそうじゃないのと、えらい違いですからね」。江戸近郊の村の場面は、丹後の山中での撮影。「季節によってはこの地域でこういうのも鳴くよねと考えて、鳥の声を付けてった」。先輩の教えと培った技術の継承を願うのである。 【第78回毎日映画コンクール 受賞者インタビュー】 女優主演賞 杉咲花 「表現しない」演技 「他人も役も分からない。だから想像できる」 男優主演賞 鈴木亮平 セクシュアリティーに悩む人々への「使命」感じた 男優助演賞 宮沢氷魚が何十回も撮り直した「エゴイスト」を通じて気づいたこと 女優助演賞 広瀬すず「キリエのうた」 アイナと共演に即決でも結婚詐欺師役に「なんで私⁉」 スポニチグランプリ新人賞 サリngROCK 「絶対イヤ」出演3度断った「BAD LANDS」 受賞に「笑いました」 田中絹代賞 薬師丸ひろ子 「偉いな、頑張ってるな」高倉健の言葉に支えられて 日本映画大賞「せかいのおきく」阪本順治監督 業界にけんかを売ったふん尿譚「こういうこともあるんだな」 日本映画優秀賞「ほかげ」 塚本晋也監督 「どうせなら思い切ってちっちゃく」逆転の発想が生んだ敗戦直後の日本のリアル TSUTAYA DISCAS映画ファン賞「美しい彼 eternal」 酒井麻衣監督 BL映画も「人の感情を丹念に」 監督賞 石井裕也「月」「人とは何か」問い続けるしかない 連続殺傷事件を映画化した覚悟と葛藤 それでも「やってよかった」 撮影賞 鎌苅洋一「月」 政治的正しさより大事なものが、映画にはある アニメーション映画賞「アリスとテレスのまぼろし工場」 岡田麿里監督 「恋する思いが世界を壊す」 閉塞を打ち破るエネルギーに 大藤信郎賞「君たちはどう生きるか」 「コーヒー飲む?」 「やらない」と決めていた鈴木敏夫を翻意させた宮崎駿の一言 ドキュメンタリー映画賞「『生きる』大川小学校津波裁判を闘った人たち」寺田和弘監督 〝作る〟より〝伝える〟「報道的な中立離れ遺族目線で」
2024.2.05
映画館でもスマッシュヒットした「美しい彼 eternal」は、凪良ゆうのシリーズ小説が原作だ。2021年にドラマ化され、放送終了後に人気が急上昇。映画化が決まり、その前段としてドラマの「シーズン2」も製作された。劇場に何十回も足を運んだというファンもいる熱意に支えられ、毎日映コンでも堂々のTSUTAYA DISCAS映画ファン賞。酒井麻衣監督は「ファンの熱量のおかげ。スタッフ、キャストを代表して感謝の思いを伝えたい」。 毎日デジタル動画ニュース 23年の日本映画代表する顔ぶれ、一堂に 毎日映画コンクール表彰式 いちずな恋心を描きたい 物語は、いわゆるBL(ボーイズラブ)系。高校時代、スクールカーストなら最下層の平良(萩原利久)は、同じクラスのスター的存在の清居(八木勇征)に恋をした。はじめは遠くから見つめるだけだったものの、やがて気持ちが通じ合い、平良の家で同せいするようになった。劇場版では、俳優になった清居と大学卒業を控えた平良の同せい生活と、2人の間に起きる事件を描く。王様キャラのくせに平良なしでいられない清居と、清居のためなら自分を顧みず尽くす平良の、熱くてもどかしい関係は、映画版でも継続中。 ドラマのシーズン1から手がける酒井監督だが、自身は「BLは通ってなかった」。そちらに詳しい妹に話を聞き、〝文化〟を踏まえて臨んだ」という。「攻めと受けとか、お作法とか、大事にしようと思いました」。とはいえ「人の感情を描くことに力を入れた」と語る。 「原作でも、いちずな恋心とか好き過ぎてこじらせてるところがすてきだったので、そこが伝わるように試行錯誤しました。型も大事だけど、中身も大事。芝居だけで見せるシーンは、演出の味付けを濃くしすぎないようにと心がけました」 「美しい彼 eternal」©️2022 劇場版「美しい彼〜eternal〜」 製作委員会 ピッタリの萩原利久と八木勇征 萩原と八木も、ドラマ版からの続投だ。「2人は役にぴったりで、平良と清居がリアルにそこにいました。尋常じゃなく熱い意気込みで、その姿勢のおかげでこの作品がより広く届いたと思う」 原作小説は55万部のベストセラー。「実写化は難しいとも言われていたし、原作ファンの反応は気になった。SNSでエゴサーチして『最終話どうなるんだろう』『映画版はどうなるの』と、好きだからこそ不安に思うファンの言葉にドキドキしてました」 やがて好意的反応が続々と寄せられた。「引きこもりだった自分が、映画を見るためにちょっとずつ外に出られるようになった」「つらい期間も、劇場版を楽しみに頑張れた」といったメッセージやファンレター。手作りのパネルを贈られたことも。「パワーがうれしいし、元気が出ます。見たら生活が楽しくなったという作品を作り続けられるように、精進したい」 作ってないと、いてもたってもいられない 高校時代の文化祭で集団創作の魅力を発見。監督を目指して京都造形芸大に進学した。卒業後は関西の映像制作会社に就職したものの、夢を追って上京。自主製作した「いいにおいのする映画」で注目され「はらはらなのか。」(17年)でデビュー。映画、ドラマで活躍が続く。 「美しい彼」のほかにも恋愛ものを手がけているが、作りたいのは「ファンタジー。人の感情を映像化するのが好き」。今回の「美しい彼」では、平良が刺された場面でバラの花びらが舞う。「平良にはこう見えてるんじゃないかなと。お願いして作らせてもらった場面です。でもそれも、振りかざしたら作品のためにならない。表現としてベストと思ったら入れます」 とにかく映画が作りたい。「作らないと、いてもたってもいられない。無条件に清居が好き、という平良と同じかも」。公開待機作や進行中の企画もあるとのことで、毎日映コンに再登場する日も遠くなさそうだ。 【第78回毎日映画コンクール 受賞者インタビュー】 女優主演賞 杉咲花 「表現しない」演技 「他人も役も分からない。だから想像できる」 男優主演賞 鈴木亮平 セクシュアリティーに悩む人々への「使命」感じた 男優助演賞 宮沢氷魚が何十回も撮り直した「エゴイスト」を通じて気づいたこと 女優助演賞 広瀬すず「キリエのうた」 アイナと共演に即決でも結婚詐欺師役に「なんで私⁉」 スポニチグランプリ新人賞 サリngROCK 「絶対イヤ」出演3度断った「BAD LANDS」 受賞に「笑いました」 田中絹代賞 薬師丸ひろ子 「偉いな、頑張ってるな」高倉健の言葉に支えられて 日本映画大賞「せかいのおきく」阪本順治監督 業界にけんかを売ったふん尿譚「こういうこともあるんだな」 日本映画優秀賞「ほかげ」 塚本晋也監督 「どうせなら思い切ってちっちゃく」逆転の発想が生んだ敗戦直後の日本のリアル 監督賞 石井裕也「月」「人とは何か」問い続けるしかない 連続殺傷事件を映画化した覚悟と葛藤 それでも「やってよかった」 撮影賞 鎌苅洋一「月」 政治的正しさより大事なものが、映画にはある アニメーション映画賞「アリスとテレスのまぼろし工場」 岡田麿里監督 「恋する思いが世界を壊す」 閉塞を打ち破るエネルギーに 大藤信郎賞「君たちはどう生きるか」 「コーヒー飲む?」 「やらない」と決めていた鈴木敏夫を翻意させた宮崎駿の一言
2024.2.04