チャートの裏側:娯楽性と融合したテーマ
2週目5位の通称「エブエブ」が、第95回米アカデミー賞の作品賞、主演女優賞、監督賞など7冠に輝いた。最多ノミネートだったから意外性はない。とはいえ、なぜこの作品がここまで評価されたのか。今回よく指摘される多様性の重視ばかりが、その理由ではないと思う。 米国で暮らす中国系の移民家族が、マルチバース(多次元宇宙)という時空間を行き来し、悪と戦う。こう書いても全くわからないが、要はマルチバースにおけるこの世ならぬ破天荒な描写の連続なのである。ときにバカバカしく、ときに下品に進む。めまぐるしい展開だ。 それが、しだいにテーマらしきものが浮上してくる。人の世の果てしない時の移ろいが、宇宙的な問答も加...