勝手に2本立て:「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」 窓からひゅっと突然に
記憶にこびりつく唐突な行動 いささか不謹慎かもしれないが、映画における人体の〝落下〟に惹(ひ)かれてしまう。むろん、人体の落下といってもさまざまある──偶然なのか意図的なのか、どこから、どのように落ちるのか。ただ、どの落下にも共通しているのは、足が地を離れて身体が虚空に放たれた瞬間、もはや後戻りは利かず、終着点が分かっているその落下を、われわれはなすすべなく見つめ続けなければならないということだ。 バリエーション豊かな落下場面のなかでも、個人的にとりわけ鮮烈なのは、窓から突然、人物が飛び降りてしまうという状況である。同じ窓でも、市川崑の「穴」(1957年)における船越英二のように助走をつ...
髙橋佑弥
2022.5.01