チャートの裏側:革命的傑作「忘却」とは
「スパイダーマンノー・ウェイ・ホーム」は、まぎれもない傑作である。スパイダーマンの正体が世間に知れたことを発端に、驚くべき話が展開される。詳細は書けない。書いてはいけない。ネタバレが過度に忌避される時代だが、本作はそのレベルをはるかに超えている。 一つだけ、ほのめかしておく。忘却、つまり「忘れる」ということが、作品の基底部にある点だ。それは、人の存在、死に深くかかわる。人の生きた証しなども含めた全存在の「無」にも行き着く。忘却は悲しいが、運命でもある。それが、映画ならではのマジックで反転する。 その視点が、ハリウッドが送り出すエンタメ大作のヒーロー論につながっている。ここが、本作の奇跡的に...