時代の目:「茜色に焼かれる」 今だからこそ撮る熱量
コロナ禍だからこそ撮りたい、撮らなければならないという熱量があふれている映画だ。主人公は、夫(オダギリジョー)を交通事故で失い、中学生の息子、純平(和田庵)を一人で育てている良子(尾野真千子)。スーパーの花屋と風俗の仕事を掛け持ちするが、義父の介護施設の費用や、亡き夫と愛人との子供の養育費も払っているため、生活は苦しい。事故の賠償金を受け取れば生活は楽になったはずなのに、謝罪の言葉がなかったことが許せず、断っている。 ずるいことが嫌いな彼女はそんな自分の面倒な性格も引き受けた上で、〝私の戦い方〟を貫いている人なのだ。理不尽な現実を嘆く代わりに良子が何度も言う「まあ頑張りましょう」という一言に...