「苦い涙」
社会派や青春もの、近作「すべてうまくいきますように」のような家族ドラマなど、近年も遺憾なく多才ぶりを発揮しているフランソワ・オゾン監督。今回は巨匠ライナー・べルナー・ファスビンダーの1972年作品「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」をリメークした。 舞台は72年、西ドイツのアパート。失恋の痛手を負った中年の映画監督ピーター(ドゥニ・メノーシェ)が、俳優志望の美青年アミールに一目ぼれし、彼を自宅に住まわせる。やがてアミールはメディアに注目されるが、ピーターは態度を一変させた彼に翻弄(ほんろう)されていく。 ほぼ予想通りに展開するメロドラマなのだが、はた目には愚かで自己破滅的なピーターの切実さを...