この1本:「ケイコ 目を澄ませて」 静かに響く闘志と葛藤
三宅唱監督の新作は、聴覚障害がある実在の女子プロボクサーがモデル。とはいえ障害を乗り越えて夢をつかむ感動物語ではないし、差別に負けずに栄光に向かう英雄モノともほど遠い。三宅監督は無愛想でストイックな主人公を、1人の人間として等身大に描き出す。 東京・荒川の古いボクシングジムで、ケイコ(岸井ゆきの)は黙々とトレーニングを続けている。弟とアパートに暮らし、ホテルの客室係をしながらジムに通い、試合に臨む。ジムの経営は思わしくなく、会長(三浦友和)の体に異常が見つかる。 ケイコの生活は中心にボクシングがあって、その周りをグルグルと回っているようだ。早朝のランニング、ジムでの練習、闘志むき出しの試合...