この1本:「ボーはおそれている」 不可解さ倍増の大怪作
「ヘレディタリー/継承」「ミッドサマー」で現代ホラーの新境地を開拓したアリ・アスター監督。新作もシュールな神経症的悪夢という点では共通だが、本作はリミッター解除、不可解さ倍増でしかもコメディー調。大怪作である。 極度の心配性であるボー(ホアキン・フェニックス)が、母親の元に向かう道中の災難を描く――という筋立ては単純だが、4章仕立ての行程たるや奇々怪々。第1章で、不穏な一角に暮らすボーは敵意と暴力にさらされ家から閉め出され、あげくに半殺しの目に遭う。第2章で親切そうな医師一家の屋敷に滞在するが、医師夫妻は戦死した長男の代わりに精神を病んだその戦友を世話し、長女は親に愛されていないと思い込んで...