この1本:「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」 悲哀たたえつつ穏やか
スペインのペドロ・アルモドバル監督は、自身の人生を重ね合わせるように映画を撮ってきた。母親との関係をうかがわせる「オール・アバウト・マイ・マザー」、老境の映画監督が主人公の「ペイン・アンド・グローリー」。アルモドバルの思想や考察が、鮮やかな映像と優れた語り口で万人の胸を打つ物語となる。理想的な最期を描いた本作は、70代半ばを迎えた巨匠の宣言であり、憧れを映しているのかもしれない。 作家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、若いころの親友であり元戦場ジャーナリストのマーサ(ティルダ・スウィントン)が末期がんと知る。マーサは治療を拒み自ら命を終わらせると決意し、イングリッドに寄り添ってくれるよ...