金の糸
ジョージアの古都・トビリシの旧市街。79歳の作家エレネ(ナナ・ジョルジャゼ)のもとに娘のしゅうとめでソビエト時代に政府高官だったミランダ(グランダ・ガブニア)がアルツハイマーになり引っ越してくる。そこに、エレネの60年前の恋人アルチルから電話がかかってくる。 ジョージアの激動の歴史と政治的対立を背景に、3人の運命と孤独、他人への理解と思いやりをあぶり出す。詩のようなセリフが内面の思考や感情を淡々と表す。エレネは人生の終末期を迎え、自身が抱え築き上げてきた重荷に縛られてはならないと気づく。過去を壊すことなく受け止めた上で、それにとらわれず、修復しつなぎ合わせることがいかに大切か。タイトルが時代、場所を超えて普遍的な意味を放つ。個人や家族という小さな固まりから社会や政治、国家に至るまでその必要性を強く問いかける。どの場面にも豊潤で慈しみにあふれた人生の断片が刻まれている。ラナ・ゴゴベリゼ監督。1時間31分。東京・岩波ホールで26日から、大阪・シネ・リーブル梅田で3月18日から。(鈴) ここに注目 過去と現在が手をつなぐ金継ぎについてひ孫に語り、通りでは踊り明かした思い出がよみがえる。歴史的な悲劇が描かれた作品だが、全編にちりばめられる美しい場面が心に残った。集合住宅の趣や部屋のインテリアなど、細部からも主人公が重ねてきた歳月が感じられる。(細)