チャートの裏側:今後の集客、口コミが鍵
お盆興行が過ぎた。年間を通して屈指の集客力を誇るこの時期だが、昨年同様に今年もそのような華やいだ雰囲気はない。複雑な心持ちで映画館に行った人、控えようと思った人、さまざまであったろう。ワクチン接種が進んだ年配者の集客も、まだまだ芳しくないと聞いた。 この14、15日の土日、興行収入で上位15本の累計が、昨年比102%、おととし比58%(同時期の土日比較)だった。これを見ると、やはり復活からは遠い。東京都内はじめ多くのシネコンが、座席の間隔をあけてチケットを販売している。心理的、物理的に厳しさは続く。 一つ、光明は見えた。興行収入が35億円を超えそうな洋画が登場したことだ。「ワイルド・スピード ジェットブレイク」だ。35億円突破となれば、洋画としては「パラサイト半地下の家族」(2020年1月)以来となる。20年前の1作目は5億円未満。近年は飛躍が続いている。 若い観客が多い。中でもカップルが比較的目立つという。カーアクションが見どころの作品だから、男性が女性を誘うパターンらしい。マーベル作品などのように、中身の推移をある程度知らないと、深く味わえないシリーズものとは違う。頭をまっさらにして気軽に見られる感覚が、若い層をそそるのだろう。今後の鍵は口コミである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)