チャートの裏側:話題作 一国主義を超え
チャート外に洋画話題作が目立つ。「最後の日本兵」として知られる小野田寛郎を描いた合作映画「ONODA 一万夜を越えて」や園子温監督の初ハリウッド作「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」などだ。スクリーン数が100以下ということもあり、10位以内に入ってこない。 2本で重要なのは国境を超えた映画製作だ。外国人が日本を描く。日本の監督が海外作品を作る。「MINAMATAミナマタ」もその1本。日本の映画界は人的交流や市場性を含めて、内向きになる傾向が強い。ここにきて、その流れに変化が起こり始めているのが面白い。 「ONODA」には驚いた。小野田をはじめ、登場人物がステレオタイプな日本人像になっていなかったからだ。戦争の病理は、いかなる国にも連綿と根をはっているのではないか。日本人との真摯(しんし)な向き合い方が、逆に普遍性を帯びる。小野田寛郎は、どの国にもいると思う。 問題作(ONODA)とエンタメ作品(園作品)では、国境を超えた製作の意味は違う。ただ一つ、共通点がある。どのようにかかわり合おうとも、狭い一国主義的視点に埋没してはならないことだ。そこではスタッフ、俳優たちの知恵、協力関係がもっとも大切になってくる。興行面での問題点ともども、もっと論議されていいテーマだ。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)