特選掘り出し!:「悪魔と夜ふかし」 恐怖とユーモア、配合が絶妙
虚構のストーリーを記録映画の様式で語るモキュメンタリーが、近年ホラーの分野で再注目されている。オーストラリアのケアンズ兄弟が監督を務めた本作は、その一種のファウンド・フッテージ(いわく付きの埋もれていた映像素材)ものだが、アイデアが斬新。おまけに芸の細かさがすごい。 1977年のハロウィーン、アメリカでトークショーの放送中に超常現象が発生。そのマスターテープが発見されたという設定のもと、番組の一部始終を見せていく。 軽妙な話術が持ち味の人気司会者ジャック・デルロイ(デビッド・ダストマルチャン)が、霊能力者や心理学者をゲストとして迎えるが、そのオカルト特番は奇妙な出来事が続発。そして悪魔に取りつかれたとされる少女が登場する後半、信じがたい惨劇が起こる。 舞台となるテレビスタジオはレトロな美術に彩られ、ジャズバンドの生演奏、観覧客のリアクションが臨場感を生む。趣向を凝らした恐怖描写とユーモアの配合が絶妙で、天真爛漫(らんまん)な少女が魔物へひょう変するシーンに背筋がぞくり。すべては作り物とわかっていてもぐいぐい引き込まれ、モキュメンタリー・ホラーの新たな可能性を感じさせる。1時間33分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)