はやの りょう
「わたしのお母さん」編集「ラーゲリより愛を込めて」編集
「パレード」「悪人」「横道世之介」「怒り」など数多くの小説が映画化されてきた作家、吉田修一と、「MOTHER マザー」(2020年)、「星の子」(20年)の大森立嗣監督が、「さよなら渓谷」(13年)以来10年ぶりにタッグを組む本作。介護施設での不審死をきっかけに、人間が背負う原罪と本質をあぶり出すヒューマンミステリー。 琵琶湖近くの介護療養施設、もみじ園で100歳の老人が不審死する。殺人事件とにらんだ西湖署の若手刑事、濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美佑(浅野忠信)は、容疑者と見なした当直の職員・松本郁子(財前直見)への強引な追及を繰り返す。さらに、圭介は妊娠中の妻がいながら、取り調べ室...
監督は、「舟を編む」(2013年)をはじめ、「川の底からこんにちは」(09年)、「ぼくたちの家族」(14年)、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(17年)、「茜色に焼かれる」(21年)、「アジアの天使」(21)など、多くの作品が国内外で高く評価されている石井裕也。主演は日本アカデミー賞の優秀主演女優賞に3度輝いた松岡茉優と、「ある男」(22年)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した窪田正孝。名実共に兼ね備えた2人が石井組に初参加する。 夢だった映画監督デビューを目前に控えて、26歳の折村花子(松岡茉優)は気合に満ちていたが、家賃滞納で強制退去寸前だし、助監督からは露骨なセクハラを...
原作は、実際の障害者殺傷事件に着想を得て、2017年に発表された辺見庸の同名小説。人間存在と社会の在り方にまつわる本質的な問いを突きつけたこの小説の映画化を2022年6月に急逝したスターサンズの故・河村光庸が生前に企画。その河村からオファーを受け、「舟を編む」(13年)や「茜色に焼かれる」(21年)の石井裕也がメガホンをとった。 物語の舞台は、深い森の奥にある重度障害者施設「三日月園」。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢りえ)は書けなくなった元有名作家。夫の昌平(オダギリジョー)と愛に満ちた慎ましい暮らしを営んでいる。 施設では、作家志望の若い職員の陽子(二階堂ふみ)や、絵の好きな青...
阪本順治の監督30作目となる本作は、初めてのオリジナル脚本による時代劇。社会の底辺でたくましく、したたかに生き抜く3人の若者たちの恋と青春を描いた。主人公のおきくは、「小さいおうち」(2014年)でベルリン映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞し、「小さいおうち」、「母と暮らせば」(2015年)、「浅田家!」(2020年)で日本アカデミー賞助演女優賞に三度輝いた黒木華。厠のひさしの下で雨宿りをしていたおきくと偶然に出会う紙屑拾いの中次は、「菊とギロチン」(2018年)でのデビューした寛一郎。下肥買いの矢亮を「宮本から君へ」(2019年)、「ちょっと思い出しただけ」(2022年)などの主演作で存在感を放っ...
ノンフィクション作家、沢木耕太郎の同名小説を、「糸」(2020年)や「護られなかったものたちへ」(21年)、「ラーゲリより愛を込めて」(22年)などで数々の映画賞に輝く瀬々敬久監督が映画化した。 心臓病を抱えた元ボクサーで、翔吾と出会って遠い昔に捨てた夢のために走り始める広岡仁一を演じるのは佐藤浩市。「つまらないことをぶっ壊したくてリングに上がった」と豪語する怒れる青年、翔吾を横浜流星が演じる。広岡の姪で、生い立ちに影を纏った佳菜子を演じるのは橋本環奈、翔吾が世界チャンピオンをかけて戦う現チャンピオンの中西を窪田正孝、真拳ジムの会長、真田令子を27年ぶりの実写映画出演となる山口智子が演じる。...
原作は、高山真のデビュー作にして自伝的小説の「エゴイスト」。監督は、「トイレのピエタ」「ハナレイ·ベイ」「Pure Japanese」などを手掛けた松永大司。「まだまだ日本において性的マイノリティが置かれている状況への理解が深まらない中、次は同性愛者である主人公をしっかりと描きたいと思っていた」との松永監督の思いが本作で実を結んだ。主人公の浩輔を演じるのは、「孤狼の血 LEVEL2」で第45回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ多くの賞を受賞している鈴木亮平。龍太役には「騙し絵の牙」、NHK 連続テレビ小説「ちむどんどん」など、話題作への出演が続く宮沢氷魚。また、浩輔の人生観にも影響を与え...
3姉弟の長女である夕子は、明るく社交的な母に幼い頃からなぜか苦手意識を抱いてきた。そんなふたりが思いがけず同居することになり、夕子は自身の心の奥底の感情と向き合うようになる。 ©2022「わたしのお母さん」製作委員会
第二次世界大戦後の1945年、厳冬のシベリア。零下40度の寒気の中、わずかな食料で過酷な労働を課せられ死者が続出する収容所(ラーゲリ)に、その男・山本幡男はいた。「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」。絶望する抑留者たちに、山本は訴え続けた。山本は日本にいる妻と4人の子どもと一緒に過ごす日が訪れることを信じ、劣悪な環境にいる仲間を励ました。その行動と信念は、日本人捕虜たちの心を次第に溶かしていく。 終戦から8年後、ようやく山本に妻からのハガキが届く。「あなたの帰りを待っています」。1人で子どもたちを育てている妻を思い、山本は涙を流さずにはいられなかった。...
東日本大震災から10年目、宮城県で福祉関係職員が餓死させられる事件が発生する。身動きを取れなくして監禁、放置されたのだ。刑事笘篠(阿部寛)は、事件直前に刑務所から出た利根(佐藤健)を追う。施設で育った利根は、震災の避難所で出会った少女カンちゃん(石井心咲)、一人暮らしのけい(倍賞美津子)と家族同然の暮らしをしていたが、けいが生活保護を受けられなかったことに怒って事務所に放火していた。笘篠は怨恨(えんこん)の線で捜査を始め、被害者の部下幹子(清原果耶)から生活保護行政の話を聞き、現場に同行する。 © 2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会